厚生年金強制加入になったらどうなる?

経営豆知識

厚生年金強制加入になったらどうなる?フルタイムで働いている会社員の人ならほとんどが会社の厚生年金に加入していることでしょう。

毎月給料から天引きされる保険料は大きな負担になりますが、将来年金を受け取るためには必要な負担です。また払った保険料は現在の高齢者に支払う年金の財源にもなっています。

本来、法人はすべて厚生年金に加入しなければならない ことになっています。

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たとえ従業員がおらず、社長一人で経営している会社であっても、法人化すればかならず給料や役員報酬を受け取る人間がいるはずです。社長一人だけの法人でも、社長の役員報酬から厚生年金保険料を支払わなければならないことになっています。ところが実態は、厚生年金に加入していない法人が数十万社にものぼります。

年金の財源が足りない中で、政府はこうした加入逃れの法人について、厚生年金強制加入の方針を固めました。
これまでも手をこまねいていたわけではありませんが、法人化されていても休眠している会社が多く、実態調査がスムーズに進まなかったというのが実情です。しかしこのたび国税庁と連携することで調査を強化させる方針を打ち出しています。お金が動いていれば国税庁には分かりますので、休眠中の法人ではない、ということになるわけです。

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調査の結果、厚生年金に未加入であることが分かれば、厚生年金強制加入に加え、最大で過去 2年分の保険料を請求されます。なぜ 2年分かというと、保険料の未納が 2年で時効を迎えるからです。2年経てば払いたくても払えない仕組みになっています。逆に言えば、2年以内であれば支払うことができ、日本年金機構は 2年以内であれば強制的に回収することができる、ということになります。

厚生年金強制加入になったら、その後の保険料の負担は避けられません。出費が増えることは間違いないでしょう。しかしそれだけで済めばまだ良いです。過去 2年分の未納保険料を請求されれば、まとまったお金を用意しなくてはなりません。夫婦二人で経営しているような会社ならまだ良いですが、従業員を何人か抱えていれば、その分も払わなければなりません。

例えば、月給 25万円の社員の場合、月間の厚生年金保険料は 45,000円強になりますから、2年分となれば約 110万円です。給料や役員報酬を受け取っている経営者+従業員が 3人いれば約 330万円の支払い、経営者+従業員が 10人なら約 1100万円の支払い です。厚生年金保険料は労使折半ですから、実質の会社負担はそれぞれ半分ですが、高額な過去分の厚生年金保険料を従業員に負担させるのが難しい場合は、全額会社負担ということになるかもしれません。

厚生年金への加入は義務ですから今後の保険料の負担は仕方がないにしても、できれば過去 2年分の請求は避けたいところでしょう。
そのためには立入調査で未加入が発覚する前に、進んで申告して加入するのが効果的です。これで必ず過去の未払いを見逃してくれるとは言い切れませんが、発覚するまで黙っているよりは心証が良くなり、見逃してもらえる可能性が高くなります。

もし、お手元に年金事務所から厚生年金の加入通知が届いているなら、無視を決め込まず、専門家に相談するか、年金事務所へ行ってください。

 

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