「同一労働同一賃金」法制化の背景

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「同一労働同一賃金」法制化の背景

「同一労働同一賃金」法制化の背景

現在、政府が法制化を目指している 「同一労働同一賃金」とは、同じ仕事をしている人は性別や雇用形態に関係なく同じ賃金をもらえる仕組み です。

年功序列制度が根強く残る日本では、簡単に変換できない仕組みですが、ヨーロッパなどでは既に当たり前のように導入されています。

正社員とパートタイマー労働者の差別的待遇を禁止する改正パートタイム労働法は既に施行されていますが、同じ仕事をするパートタイマー労働者が正社員と同じ賃金にはなっていないのが現状です。同一労働同一賃金を法制化しようとする動きは少し前からありました。しかし法律化されるまでには至らず、推進する法律ができたに過ぎません。2015年に成立した推進化にしても、三年以内に法制上の措置を講じる、といういかにも曖昧な表現でした。

ところが2016年2月、国会で首相が法制化に向けての強い意欲を示したため、今後法制化に向けての動きが一気に加速する可能性が出てきました。このように首相が法制化を急ぎ始めた背景には、景気回復の遅れや平均賃金の低下があります。経済成長2%を掲げる現政権は、なんとしてでも消費を増やしたい考えです。そのためには労働者の賃金が上昇しなければなりません。しかし平均賃金は年々下がり続け、景気の回復が進まない状況が続いています。

平均賃金が上がらない大きな原因は、派遣社員などの非正規労働者の増加です。これまですべての労働者の平均賃金データしか発表されていませんでしたが、2015年初めて正規労働者と非正規労働者それぞれの平均賃金が発表されました。それによると、正規労働者は非正規労働者のおよそ三倍の賃金になっています。正社員の平均賃金は下がっていないものの、賃金の低い非正規労働者の増加によって、平均賃金が引き下げられている実態が浮彫りとなりました。平均賃金を上げ、消費を増やすには、非正規労働者も賃金も上げるべき、という結論に至ったのでしょう。

もう1つは派遣法改正、一定の条件を満たす労働者に対して残業代を払わなくても良いなど、労働者にとっては厳しい内容の法案が相次いで可決されたことと関係しています。これにより現政権は労働者の敵、との印象を強くしてしまい、イメージ回復の狙いもあるでしょう。少なくとも正社員と同じ仕事をしているのに低賃金で働いている派遣社員などの非正規労働者には支持されるでしょう。

しかし本当に法律化されるのか、派遣社員などの非正規労働者の賃金が正社員並みに上がるのか、といった点についてはまだまだ未知数です。今後の行方を国民全員で見守っていく必要があります。

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