押し紙とは?〜押し紙問題を考える

報道されない話

押し紙とは?〜押し紙問題を考える

押し紙とは

活字離れとインターネットの普及によって、新聞の売上は年々減少傾向にあります。

ニュースや情報は多くの人がパソコンやスマートフォンで確認する時代に突入し、紙媒体である新聞の存在意義というのはその主張を弱めつつあります。インターネットを経由した配信と新聞を比べると、読者の目に情報が届くまでのプロセスに掛かるコストが大きく異なります。

インターネットはサーバーがあればすぐに情報を全世界に配信することができますが、新聞の場合は印刷し、それを全国に配送し、販売店から個人宅に配達しなければならず、何重ものコストが掛かってしまいます。

そんな新聞ですが、媒体価値を測る上で、販売部数というのが重要視されます。各新聞社は、自社の人気が高く媒体価値が高いことをアピールするために、新聞の部数を伸ばそうと必死になっています。

そこで問題になってくるのが、今回触れる「押し紙」問題です。

押し紙とは、新聞本社が販売店に、必要以上の部数を押し付けて卸してしまうという現象です。本来販売店は契約している購読者の部数と、それに伴う予備の数だけで事足りるはずです。

しかし、新聞社側は必要以上の部数を販売店に卸しており、本来必要でない部数を含めて「発行部数」として発表することによって、自社の新聞の媒体数値を多く見せているという現状があります。

そして、実売の部数と、販売の部数に大きな差があるということが「押し紙問題」なのです。

では、なぜこのようなことが許されるのかというと、ある一面では筋の通った考え方も存在するからです。販売店の仕事は購入者の数を増やすことです。必要な数だけの部数しか卸さなければ在庫を処分しようという努力をしません。必要以上のものを与えることによって、販売店の営業意欲をかきたてようとする狙いもあるわけです。書籍と異なり、販売店は、押し紙分の余った新聞を返品することができないため、押し紙による“過剰在庫”が、今度は客に対する押し売りという新たな問題を引き起こす場合もあります。

こう見ると、販売店側にとって「押し紙」はデメリットだけのように思えますが、実は、販売店側にとって「押し紙」はメリットになる面もあります。

販売店は、新聞を販売するだけでなく、折込チラシという形でも収益をあげます。折込チラシを希望する企業に対し、販売店は、実際の「販売部数」ではなく、新聞社が発表する「発行部数」を前提に広告料金を設定します。つまり「押し紙」によって他のポスティングサービスと比較し、値段を高く設定することができるわけです。

押し紙問題は根深い

一例になりますが、先日、朝日新聞社の販売店が押し紙問題を取り上げて、リークした数字が報道されていました。それによると、朝日新聞社の実際の販売部数が 444万7000部だったのに対して、発行部数は 654万部だったそうです。つまり、実に 210万部ほどが押し紙です。

真偽のほどはわかりませんが、もし本当の数字であれば、押し紙によって50%近くも部数を“水増し”していたことになります。

資源のムダというのもありますが、発行部数によって紙面広告や折込広告の料金が計算されていることを考えると、本来負担すべきでない広告費を新聞社や販売店に支払っていることになりますから、押し紙は健全な仕組みとは言い難い状態だと言えるでしょう。

そしてそもそも、真実を伝えなければならない新聞が、その発行部数を大きく“水増し”していることは、道義的な問題もはらんでいます。