コーポレートガバナンスとは、「会社統治」または「企業統治」と訳されることが多い言葉です。
一昔前までは企業は誰のものか、というと「株主のもの」という定義が一般的でしたが、実際は企業の周りには「ステークホルダー」という様々な利害関係者が存在しています。ステークホルダーの具体例としては、出資している金融機関、そこで働いている従業員、メーカーであれば製品を購入する顧客、製品あるいは部品を卸す下請け業者、企業の施設の近隣住民、などがあげられます。
これらのステークホルダーの相互の利害関係への配慮をしつつ、円滑に調整し、企業活動を行っていくことが肝要です。
例えば、ある製品が大ヒットして注文が殺到して、納期に間に合わない恐れが出てきたとします。企業は顧客のニーズに応えようと工場の稼働時間を増やし、従業員を増員して生産を増やしていく取り組みを始めました。しかしながら、工場の稼働時間が長くなることで、従業員の残業は増え、体調を崩す者が出始めました。それから、原料を搬入する回数が増えたり、工場の稼働が深夜に及ぶことになったり、製品の出荷が増えたことで、従来よりも近隣に騒音をまき散らすようになりました。そのため、近隣住民からの苦情が殺到することになったとします。
その結果、企業はステークホルダーの利害関係を鑑みて、一方的な増産にストップをかけ、適正な生産に戻すことにしました。株価上昇を期待していた株主はこの動きは株価上昇にとってマイナスの要因となることから、経営者は株主総会で株主への説明を求められることになります。
現在は SNS の発達により、企業が不条理な行動をすると即座に動画や画像をアップロードされてしまい、瞬く間に不特定多数の間に広まってしまいます。それが真実と異なるでっち上げであっても、それが本当のことのように広まってしまい、対応が後手後手となってしまい、最終的に経営者がお詫び会見をして収めなければならなくなるリスクがあります。企業はコーポレートガバナンスをしっかりと確立させて、バランス感覚のある経営が求められているといえるでしょう。
更には同族会社で起こりがちなことですが、経営者が会社の利益拡大なのか創業家の利益拡大なのかはっきりしないといった、会社の私物化の問題があります。こういった場合も、コーポレートガバナンスの概念を守り、適正な企業活動を行うことが企業を末永く成長させることにつながるといえます。
「コーポレートガバナンス」と聞くと堅苦しい言葉に聞こえますが、現代の企業活動には欠かせない考え方です。