スラップ訴訟をされたらどう対応する?
訴訟の一種である「スラップ訴訟」は政府や大手企業などの権力を持った者が弱者である個人に対し威圧的に行う訴訟です。「威圧訴訟」や「恫喝訴訟」などとも呼ばれるもので、訴訟を起こすこと自体が被告を威圧、または恫喝する目的となっています。
「スラップ訴訟」という単語を耳にしたことがある方はそう多くないと思います。というのも、訴訟大国であるアメリカでも最近対応が始まったばかりのもので、日本では2000年頃から内部告発を行う元従業員や企業や自治体を批判する被害者団体、または支援団体などに対し「業務妨害」や「名誉毀損」を名目とした民事訴訟が乱発するようになり、これらがスラップであるとして社会的にも問題が公となってきました。
最近、特に問題となっているのは特定の企業を批判する記事を掲載した記者個人を当該の企業が名誉毀損だとして訴えたものなどがあります。マスコミなどによる表現の自由を根本から揺るがす行為であり、いつ自分が同様の訴訟の被告になってもおかしくないという方もおられるでしょう。ちなみに、マンションの建設に反対した団体を建設企業が訴訟を起こした事案もあります。
この手の問題は比経済力を持っている企業や政府の団体が原告として弱者を被告として恫喝並みの訴訟を行うことが多く、訴えられた個人は訴訟の準備を行う費用や時間などの負担を強いられます。精神的な負担も大きく、原告が勝訴すると法外な賠償金が発生することもあり、経済的なダメージもあります。
仮に原告が敗訴したとしても、本来の目的である嫌がらせ行為は達成されたも同じで大したダメージはないでしょう。また、スラップ訴訟は見せしめ行為でもあり、公の場で批判しようとしていた他の個人を抑圧することになり、被告側が証人として協力を求めても味方になってくれる人は極端に減ります。同様に、人間関係を壊すことを目的に批判する者自身ではなくその関係者を訴える場合もあります。
一部のマスコミをはじめとするジャーナリストの間ではスラップ訴訟の認知度は高くなってきましたが、日本での知名度はまだ定着してきているというような状態です。仮にスラップだと分かっていても「これはスラップ訴訟だ」と批判するだけでスラップ訴訟対策を行う事例はまだ多くありません。
スラップ訴訟の被告となった場合、裁判所から書留で「訴状」が届きます。訴状の内容には数千万単位の請求金額が書かれてあったり、読むだけでもパニックになることもあるでしょう。これも原告側の作戦です。
訴状には裁判所の担当書記官の連絡先が同封されているので必ず確認し、裁判の準備を行います。これを無視してそのままにしておくと相手の言い分を認めたことになり、請求額の金額をそのまま支払うことになるので注意が必要です。その上で弁護士を探します。提訴されてからすぐに弁護士が必要になるわけではありませんので、落ち着いて信頼できる弁護士を探すのが良いでしょう。
特にスラップ訴訟案件に詳しい弁護士が適切なのですが、専門性の高い分野であり、スラップ訴訟案件を経験した弁護士も日本にはまだほとんどいないかもしれません。
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