ナレッジ・マネジメントとは、簡単に言うと、個人が持っている知識を組織全体で共有することです。個々人が持つ知識を会社全体で共有することによって、経営が円滑に行われるメリットがあります。
ナレッジ・マネジメントを実践する上では、個人の知識を共有するツールとして、ほとんどの場合でパソコンが使われますが、ナレッジ・マネジメントの黎明期であった1990年代には、パソコンが普及して誰でも情報を共有することができる環境は整ってたものの、システム操作が複雑すぎて多くの人が使いこなせず、知識を共有することに失敗していました。また製造業など技術力を向上させる分野では、新人がベテランの技を盗むのが一般的だったのでわざわざシステムを構築することすらしない状況でした。
2000年代に入ると、ナレッジ・マネジメントを実践するには、システムを構築するだけでは無意味なことや知識そのものを見つけ出す方法が重要であることが浸透してきます。
そして、現在では実践できる知識を分かち合うために、システムを超えて休憩所やSNSでの会話などもナレッジ・マネジメントにつながると考えられていて、企業は、SNSの構築や、社員が会話しやすいようにオフィスのレイアウトを工夫するといった物理的な場所の提供に積極的になってきています。
より多くの知識を持っている社員は業績が良いという傾向がありますが、そういった社員に対し、ナレッジ・マネジメントで成功するためにノウハウを開示するようにと言われても、自分の優位性が損なわれることに対して積極的にはなれません。
また、ナレッジ・マネジメントにおいては、成功につながる知識だけでなく失敗してしまった知識も共有されることが大切ですが、自分の失敗を多くの人に知られることを恥ずかしいと感じる社員もいます。
このような空気が漂っていると、ナレッジ・マネジメントを呼びかけても集まる知識が少なくなってしまいます。
まずは、成功や失敗をオープンにしても自分の存在価値は変わらないことを示すために、まず、上司たちが“知識(ナレッジ)”を出していくと良いでしょう。
企業のトップが明確な目標を定め、その目標を達成するために有効となる知識を上司たちが持ち寄ります。実際の業務で使えそうな“ナレッジ”をストックしていくのがポイントです。一般的な社員が欲しがる知識がなければ、ナレッジ・マネジメントも必要とされなくなります。
まとまった数の“ナレッジ”が集まり、“ナレッジ”の質が高ければ、システム内で検索したり、休憩時の会話に取り上げられたり、とナレッジ・マネジメントが身近な存在になります。
その結果、次第に自分が持つ知識を開示することに抵抗がなくなって、企業に利益をもたらしていきます。もし、上司だけでは積極的な姿勢が伝わらない時は、ナレッジ・マネージャーを用意して本格的なプロセスを実行することになります。