危急存亡(ききゅうそんぼう)
古来より、人は自らの教訓を言葉で残し、古人の知恵や経験を「故事成語・ことわざ」として現代に伝えてきました。
その中から、時を超えて、人生に様々な示唆を与えてくれる「故事成語・ことわざ」を独断と偏見で選んでみました。きっとビジネスだけでなく、人生においても参考になるでしょう。
今回選んだのは、
危急存亡(ききゅうそんぼう)
という中国の有名な軍師 諸葛孔明が書いた「出師の表」が出典の故事成語です。
「危急存亡(ききゅうそんぼう)」とは
「危急存亡(ききゅうそんぼう)」とは、
「危機が迫って、生死の瀬戸際にあること」を指します。
では、出典となった諸葛孔明の「出師の表」の一節を見てみましょう。「出師の表」とは、宿敵である魏の討伐に出発するにあたり、蜀の丞相であった諸葛孔明が皇帝 劉禅に奏上した文章のことです。
先帝、創業未だ半ばならずして、中道に崩殂せり。
今、天下三分して、益州疲弊す。
此れ誠に危急存亡の秋なり。
今、天下三分して、益州疲弊す。
此れ誠に危急存亡の秋なり。
然れども侍衛の臣、内に懈らず、
忠志の士、身を外に亡るる者は、
蓋し先帝の遇を追いて、之を陛下に報いたてまつらんと欲すればなり。
誠に宜しく聖聴を開張して、以て先帝の遺徳を光にし、志士の気を恢にしたもうべし 。
宜しく妄りに自ら菲薄し、喩えを引き義を失いて、以て忠諫の路を塞ぎたもうべからざるなり。
とあり、現代文に訳すなら、
先帝は、漢王朝復興の志半ばで崩御なさいました。今天下は魏・呉・蜀の三つに分かれ、わが蜀の地である益州は疲弊しております。これは、差し迫った危機であり、存続するか亡びるかの瀬戸際にあるといえます。
そんな状況でも、陛下の御側にお仕えする臣下は宮中の仕事を疎かにせず、忠義心をもった者たちがわが身を忘れてお仕えしておりますのは、思うに、先帝に感謝し、その恩義を陛下に報いようとしているからでございましょう。
むやみに自らを無価値なものと卑下したり、自分に都合のいい例え話で言い訳をするなど、臣下が忠心から陛下に進言する道を塞いではなりません。
といった感じになります。
「出師の表」からは、悲壮な覚悟で魏との戦いに臨む諸葛孔明の姿が見てとれますが、孔明の心の内を最もよく表した言葉が「危急存亡」という文字であったといえるでしょう。