収支計算と事業プランが欠けると失敗する

経営豆知識

収支計算と事業プランが欠けると失敗するマーケターという職業柄、様々な相談をいただきます。今回は、そういった相談の中で感じたことの一つとして、「収支計算と事業プランの重要性」について書いてみようと思います。

ある時、海外の有名アーチストの日本での展覧会について全権を委ねられたという方からの相談を受けました。

話を伺うと、一枚の文書を見せてくれました。英語で書かれた文書を見ると、確かに「全てを任せる」と書いてあります。

さらに話を聞くと、いかにその文書が凄いかについて滔々と述べられていました。そして、最後に「大手広告代理店でも乗ってくる話だと思うので、どのように事業を進めていけば良いのかアドバイスが欲しい」とのことでした。

私の方から「どのような作品を日本に持ってこれるのですか?」と聞いたところ、「まだ話はしていないが、有名な作品でも持ってこれると思う」と返事がありました。続いて、現時点で持っているプランについて聞いたところ、「自分が知っている博物館で最初は展示し、その後、各地の美術館や博物館へ展示していくプランを持っている。“引く手あまた”だから金額面での問題はないだろう。御社にもお金を落とすので力を貸して欲しい」とのことでした。

そして、具体的に急いで進めていきたいので「大手広告代理店の責任者を紹介して欲しい」と言われましたが、それまでの話を踏まえて、お断りをすることにしました。

確かに有名アーティストと交渉して、全権を委任されたことは凄いことだと思います。しかし、その時点では、単なる紙切れが1枚あるだけです。そして、その紙切れ1枚と本人の希望的観測の“プラン”だけで事業化していくことは難しいと判断させていただきました。

大きな話であればあるほど、総論はOKでも、細かい話になってくると双方が折り合わないことは往々にしてあります。今回の場合だと、持ってこれる作品で揉めたり、金額面で折り合う美術館や博物館も多いでしょう。

大きな話=関係者が多い、ということですから、その多い関係者の利害を調整し、いずれも利益が出るようにしていくことは至難の技だと思います。収支が成り立つかどうかわからない案件を大手広告代理店へ投げても引き受けはしません。

当初から収支計算とプランが欠けた事業で上手くいった例を私は知りません。

今回の場合であれば「どういった作品を日本に持ってこれるのか(人を呼べる有名な作品があるのか)」「アーティストの側はいくら位で作品を貸し出そうとしているのか」「大きな美術館や博物館はいくら位の金額だったら引き受けるのか」といった最低限の情報は必要ですし、それに基づいた大まかな事業プランニングも必要です。

その上で、相談に来られていたら良かったのですが・・・。