大塚家具といえば、創業者の大塚勝久氏とその娘である大塚久美子氏が経営方針で株主も巻き込んで対立し、テレビ・新聞などで大きく取り上げられていましたので、ご存知の方も多いと思います。当時、旧態然とした販売手法を採ろうとする父親と、新たなマーケット開拓にチャレンジしようとする娘という図式で主に報道されていたように思います。
その大塚家具が 6月3日に 2016年12月期の業績予想についてプレスリリースを発表しました。プレスリリースによると、今期は、前回の業績予測から売上高で47億円のマイナス、営業利益で20億円のマイナスとなり、営業利益・当期純利益とも赤字に転落する見通し とのことです。
大塚家具は12月決算ですので、今期はまだ半分も終わっていないわけで、下手をすると年度で売上が 100億円前後のマイナスになってしまうかもしれません。昨年度の売上高が 580億円ほどですので、売上高が47億円、ひょっとしたら100億円規模で減るかもしれない今の状況は危機的といってもよいでしょう。
大塚家具は、高級家具店から中級家具店へ、顧客一人ひとりに手厚い接客を行う会員制を廃止し、誰もが気軽に入れるカジュアルな店舗へと急激に舵を取ったわけですが、マーケティングから考えると、ターゲット層を広げること、特に高級志向の購買層からより中級志向の購買層へ拡大して増収を目指すのは、言うのは簡単ですが、非常に難しい選択にチャレンジしていると思います。
基本的に 中間層に合わせたマーケティング戦略を採るのは得策ではありません。
中間層をターゲットにすることで、一見、よりマーケットの広い層を獲得できそうに感じますが、実際は自社が得意としていた従来のマーケットを捨てて、新たなマーケットにチャレンジすることに他なりません。大塚家具のような会社の場合、通常であれば、セカンドブランドを作って、より安価なサービスを求める購買層のニーズを獲得していく選択をすべきだと思いますが、大塚家具は自社の長所を捨てて、レッドオーシャンである中間層の家具マーケットを目指す選択をしてしまいました。
さらに、中間層マーケットへフォーカスしたことで、大塚家具は大規模セールを頻発することになります。
セールはカンフル剤であるだけでなく、頻度を高めれば高めるほど自社商品・サービスの価値やブランド価値をドンドン下げてしまいます。高級志向の顧客層を抱えていた大塚家具にとっては、使い道が難しい “代物” ですが、セールを繰り返すことで、急速に既存顧客流出が起こっている と思われます。