先日、タレントでもある大渕愛子弁護士が所属する東京弁護士会から懲戒処分(1ヶ月の業務停止)を受け、謝罪会見を行いました。今回は弁護士の懲戒処分について見てみます。
まず、ざっと大渕愛子弁護士が懲戒処分を受けた経緯をまとめてみましょう。
2010年、大渕愛子弁護士に対してある女性(以降、依頼人)が離婚に伴う養育費請求を依頼し、その際、両者の間では着手金178,500円と、月々の顧問料21,000円を支払うという約束を交わしました。
その後、依頼人は報酬支払に関して法テラスの援助制度を利用します。それによって、法テラスでの基準まで着手金を減額する事が出来るようになり、大渕愛子弁護士は法テラスから着手金125,000円を受領しました。通常、法テラスを利用した依頼人から弁護士が報酬を受ける事は禁止されていますが、大渕愛子弁護士は約束した着手金の不足分である53,500円と5ヶ月間の顧問料の合計178,500円を受け取りました。
これに対して依頼人は不当な支払に当たるとして、2011年に弁護士会を通して大渕愛子弁護士に対して払う必要のなかった分の費用の返金を求めました。しかし、大渕愛子弁護士側はその請求を最初は拒絶しました。ただ、その後東京弁護士会の副会長の説得を受けて返金に応じた、と言うのが事の次第です。
大渕愛子弁護士の言い分としては、それまでは海外で仕事をしていたために法テラスについての知識が不足していた、理解不足だった、そのため返金に応じなかったという事になっています。
今回の問題点としては、依頼人から返金を請求された場合、本来は弁護士としてはそれが正当な理由である場合はすぐに返金する義務がありますが、今回は返金を拒否するという対応を最初にしてしまったことにあります。そして、弁護士会副会長の説得によってやっと返金に応じたという一連の行為が、弁護士の「品位を失うべき非行」に当たると判断され、業務停止1ヶ月の懲戒処分と言う事になりました。
通常弁護士が何らかのトラブルを起こした場合、その内容によっては懲戒処分が行われます。
懲戒の種類は1種類ではなく、軽い方から
・戒告
・2年以内の業務停止
・退会命令
・除名処分
の4種類に分かれています。
戒告は問題に関して今後は注意するように、気を付けるようにと口頭注意と言う事になります。退去命令の場合は、当該する弁護士会を退去する事にはなりますが、他の弁護士会で登録申請をして申し入れられれば、その後も弁護士として仕事を続ける事が出来るという物です。
最も重い処分は除名処分で、この場合は弁護士としての身分をはく奪する事になります。この様に見て行くと除名処分よりも退去命令の方が軽く見えますが、実際には他の弁護士会に登録を認められるという事はないため、退去命令と除名処分による結果はほぼ同じです。
今回の大渕愛子弁護士の事例に関しては、軽い方から2番目に当たる「2年以内の業務停止」と言う事になります。またその期間も1ヶ月以内と言う事になっているため、1ヶ月を過ぎれば再び弁護士として仕事をする事は十分可能です。
しかし、過去から継続してきた顧問契約を一旦全て終了する必要があるなど、1ヶ月という数字以上に重い処分となっています。また、業務停止処分を受けるという事はそれなりの問題を起こしたと弁護士会の方で判断されてしまったという事になる為、今後の弁護士業務に関しても少なからず影響を与える可能性があります。