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暗かに陳倉に渡る
古来より、人は自らの教訓を言葉で残し、古人の知恵や経験を「故事成語・ことわざ」として現代に伝えてきました。
その中から、時を超えて、人生に様々な示唆を与えてくれる「故事成語・ことわざ」を独断と偏見で選んでみました。きっとビジネスだけでなく、人生においても参考になるでしょう。
今回選んだのは、
「暗かに陳倉に渡る(ひそかにちんそうにわたる)」
という中国の有名な兵法書「三十六計」が出典の故事成語です。
「暗かに陳倉に渡る(ひそかにちんそうにわたる)」とは
「暗かに陳倉に渡る」とは、
「正面から攻めると見せかけ、実際は迂回して、相手が予期していない方向から不意打ちにする」という意味になります。
「暗かに陳倉に渡る」の話
中国において秦が滅亡して一時的に項羽が覇権をとった時代、蜀に封じられた劉邦は、関中(現在の長安一帯)への進出を図る為、新たに臣下となった韓信の策を採用しました。
実際に行動に移した韓信は、蜀から漢中へ出る全長200kmにも渡る一本道「蜀の桟道」の修理を行う一方で、山脈を大きく迂回して、陳倉を経由で関中を奇襲しました。敵将の章邯は「蜀の桟道」の修理が終わってから攻撃があるだろうと油断していた為、戦力に優っていたにもかかわらず次々に敗れ、関中を劉邦軍に奪われてしまいます。
「暗渡陳倉」によって要衝を奪った劉邦は、項羽に対して徐々に優勢となり、天下統一を果たすことになりました。
「暗渡陳倉」は、偽りによって相手を欺く計略の一つですが、偽装に相手の目を向けて真意を隠し通すことがポイントとなります。その意味では、高度な計略で、自分たちよりも強大でかつ油断しがちな相手に有効な戦術と言えるでしょう。
そして反対に、自分たちがライバルよりも有利な立場にある場合は、油断せずあらゆる方面からの “攻撃” に備えておく必要があります。