退職勧奨とは、会社が従業員に退職を誘引する行為のことを言います。
退職勧奨は、基本的には会社が自由に行う事が出来ますが、その対応によっては不法行為にもなりかねません。そのため、退職勧奨を行う際には慎重に対応することが必要です。
退職勧奨を行う場合に気を付けなければならないポイントは、自由意志を持つ従業員に対し、強要や説得を行わないことです。また、退職勧奨を頻繁に行ってはいけません。
退職勧奨は1ヶ月に1回程度に抑えなければならず、それ以上の頻度で行うと脅迫、または強要と解釈されず、名誉棄損行為として慰謝料を請求されることさえあります。
退職勧奨には時間の長さにも注意が必要であり、1回につき30分程度に止めなければなりません。あまり長い時間、退職勧奨を行う事は監禁と解釈され、会社にとって非常に不利益となります。
また、退職勧奨とは基本的に従業員の決定による退職となりますので、失業給付上「会社の都合による離職」か「自己都合の離職」かの判別が微妙です。
会社を退職する場合、失業保険の理由には「会社都合」と「自己都合」があり、これによって受給期間や待期期間が大きく変わってきます。失業保険の給付はハローワークから出されるものなので、一見すると会社には関係ないように思われますが、そうではなく、「会社都合」とされた場合は解雇の扱いになり、解雇予告の請求が届きます。
企業は雇用に際して助成金を受給することが出来ますが、その条件として6か月以内に解雇を行っていない事が必要で、「会社都合」の解雇となったときには一定期間助成金を受ける事は出来ません。
「会社都合」「自己都合」が曖昧にならないためにも、退職するにあたり合意が得られた場合、退職の意思表示は必ず書面による退職願いを提出してもらうことが重要です。
合意を得られた場合においても、後で「会社に解雇と言われた」または「解雇とは言っていない」といった主張が食い違う場合がありえます。
契約上は退職の意思表示を口頭で行った場合でも有効ではあるのですが、口頭だけではそれを証明することが難しくなります。退職届があれば自主的に退職の意思を示したことが証明されるので、後のトラブルを避ける意味でも書類は必ず提出してもらう事が重要です。
但し、退職勧奨の場合、退職届の提出があったとしても、従業員に対して執拗に退職を勧めた場合は、退職が無効になり不法行為として扱われるかもしれません。
不法な退職勧奨とならないように会社側は勧奨を受けた従業員のことを考え、退職金の上乗せや、会社の考えを丁寧に説明するなどの配慮する必要があるでしょう。