遠隔戦〜ランチェスター戦略
ランチェスター戦略は、元来、経営学や経営戦略上の用語ではありません。
もともとはまさしく実際の戦場、戦争における戦略を考えるもので、兵力の大きいものはどのような戦い方をするべきか、逆に兵力の少ないほうはどのような戦い方をするべきかを考えたものです。
実際、昔の戦いでは、ほとんどの場合、兵員数の大きいほうが勝つことが多かったのですが、たとえ勝つにしてもできるだけ損害を少なくして勝つにはどのようにすればよいか、そして、兵力の少ないほうはどのようにすれば少しでも勝率が高まるのかについて考えたものがこのランチェスター戦略なのです。
そして、ランチェスター戦略では、兵力の大きいものがとるべき戦略として、「強者の五大戦略」と言われる5つの戦法が挙げられています。名称だけを書くと、広域戦、遠隔戦、確率戦、総合戦、誘導戦になります。
これらのランチェスターの強者の戦略は必ずしも実際の戦争だけでなく、経営戦略、ライバル会社に勝つための戦略としても有用であると言われています。ここでは、この強者の五大戦略のうち、経営戦略における「遠隔戦」の具体例を紹介していきましょう。
「遠隔戦」とは、実際の戦闘で言えば例えば銃器や大砲などを用いて、敵と離れて勝負する、ということです。
この逆は「近接戦」「接近戦」となります。つまり、最も分かりやすいのは1対1の白兵戦です。1対1で戦えば、個々の実力差だけで勝負できます。たとえ全体的な兵力で圧倒的な差があったとしても、極端な話、狭い山道で1対1でしか戦えない状況ですと、一人強力な兵士がいると、大軍でも個々に撃破されてしまう可能性が高まります。
兵力の大きいほうとしてはそんな戦い方をするべきではなく、例えば広い平原で両軍が対峙した状態で、接近戦をするよりも前に大砲などを用いて敵を蹴散らすべき、ということになります。
これを経営戦略に当てはめるとどういう具体例が考えられるでしょうか。
例えば、一人一人の営業マンの力に頼りすぎないような戦略が考えられます。個々の能力でマーケットを開拓していくのではなく、潤沢な資金力に物を言わせて大規模にTV広告を打つなどして、圧倒的多数の顧客に対して絨毯爆撃的にアピールするといった戦略がまさにランチェスター戦略でいうところの「遠隔戦」です。
一方、個々の営業マンの力を活かして顧客を増やそうとする戦略は、まさにこの対極にある「近接戦」「接近戦」の考え方ということができます。
個々の顧客に対して泥臭く戦ってくる弱者に主導権を与えず、豊富なリソース(ヒト・モノ・カネ)を最大限有効に使うことで、ランチェスター戦略が言うところの「遠隔戦」が実践できるわけです。
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