陽動作戦〜ランチェスター戦略
弱者が強者に立ち向かうには正攻法では歯が立たず、接近戦に持ち込んだり、持てる力を全部注ぎ込む一点集中といったやり方が求められます。
ランチェスター戦略の中には、こうした弱者向けの戦略(弱者の五大戦略)があり、その中に「陽動作戦」というものがあります。
陽動作戦とは、敵の判断を間違わせるため、敵が予想もしないようなことをする作戦です。いわゆるかく乱作戦であり、弱者側の意図を強者から見えないようにさせて、疑心暗鬼にさせることが求められます。
陽動作戦を行うことのメリットとしては、敵の心理を動揺させること、兵力を分散させることが挙げられ、具体的な効果としては、“武器”の質を落とさせる、人員を分散させるというものがあります。
もし、弱者と強者が同じレベルの武器効率だとしたら人員で勝る強者が勝つのは明白です。人員を削らせる、もしくは武器効率を落とさせることが何より重要となります。そのため、陽動作戦でそのどちらか、もしくは両方を削って勝利することが考えられます。
この場合、大切なことは相手に自分たちの意図が把握されないようにすることで、戦術が分かってしまったらその意図もお見通しとなり、手を打たれてしまいます。
では、陽動作戦の具体例を挙げてみましょう。
ビジネスでは、度肝を抜くような商品を打ち出して、話題を独占してしまえばそこに人が流れていきます。弱者は挑戦者で、ある意味失うものが少ない立場ですから、強者が予想もしない戦略を立てることができます。
例えば、日本ではブロードバンドの普及、高速通信の競争は通信会社がモデムを無料で配ることから始まりました。その結果、それまでは1社のほぼ独占に近かったシェアが一気に崩れ、群雄割拠の時代を迎えていくことになりました。
これも陽動作戦であり、強者にはマネできません。強者にはマネさせない戦略をいかにできるかがこの場合は重要となります。だからこそ、緻密な戦略が求められ、その動きが見透かされれば、強者に先手を打たれることになります。
弱者は「差別化」で勝負するのが鉄則ですが、その差別化された強みを消すように商品を販売するということをすれば強者と同じ“武器効率”となります。相手に自らの意図が把握されないようにするというのは、差別化した強みを消されないようにすることを意味しています。
弱者といっても、その分野での新規参入者も弱者として扱われるため、潜在的な強者と現時点での強者の戦いになることがあります。そうした時ほど、こうしたかく乱作戦は効果を発揮します。携帯電話のシェア競争もまさにこの作戦が効果を発揮し、差別化によって盤石の強者を引きずりおろしています。
「陽動作戦」で効果を上げるには、場当たり的ではない、用意周到さが何より重要でしょう。
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