喫茶店の店内で商談をしている人たちをよく見かけます。内容は様々ですが、中には怪しそうな“ビジネス”もあります。今回は、都内のルノアールという喫茶店でたまたま見かけた“ネットワークビジネス”について触れてみることにしましょう。
その日、私はアポイントの空いた時間を潰しに待ち合わせ場所の近くにあったルノアールへ入りました。店内はかなり混み合っていて、席間が詰まった座席しか空いていなかったので、そこでコーヒーを飲んでいたのですが、少し後にルノアールの店内へ入って来たビジネスマンたちが隣の座席に座り、商談を始めました。
耳をそばだてて聞いていたわけではありませんが、席間が詰まっていたのと、説明していた男性の声が大きかったので、話は丸聞こえの状態でした。会話から類推すると、どうやら「水素風呂」の販売店がその取次店を勧誘しているようです。
当社にも色々な商材の営業が持ち込まれますが、この手の“ビジネス”にはある共通のセールストークがあり、
- 商品自体は「新しい技術」「健康に良い」「科学的な根拠がある」がある
- 売り方としては「ネットワークビジネスではない」「価格がそれほど高くなく売りやすい」
- 参加するメリットとしては「ストック収入が得られる」「初期投資がなくリスクがない」
という共通点があります。
もちろんセールストーク通りであれば何の問題もないのですが、多くの場合、巧妙にフィルターが掛けられています。
「新しい技術」「健康に良い」「科学的な根拠がある」は、医師や大学教授の個人的な意見だったり、「ネットワークビジネスではない」部分は、確かにお客さんを集めていくのは「ネットワークビジネス」でないけれど、自分の下で動く取次店を作る部分は、結局「ネットワークビジネス」だったり、「リスクがない」ことで相手の営業力を借りて取次店を増やす目的が透けていたり、といった具合です。
で、この日私の隣で繰り広げられていた商談は、まさにこの共通点を全て満たしていました。しきりに「水素社会がまもなく来る」と言っていましたが、「水素社会が来る」ことと「水素風呂が売れる」ことは天と地ほど異なります。
ここからは個人的な考えですが、ネットワークビジネスは論外として、
- 投資家から資金を募って拡大していくビジネス
- 他人の営業力を当てにするビジネス
- 営業マンが饒舌に語るビジネス
は、成功しない、あるいは途中までは成功していてもどこかで破綻する“ビジネス”で経営者は手を出すべきでないでしょう。どんな会社でも、自分の事業領域はプロですが、事業領域以外は単なる素人です。素人が新規事業に参入して成功するほど世の中は甘くないと思うのですが・・・。