兵を形するの極は無形に至る
「孫子」は、二千数百年前の弱肉強食の時代に生きた孫武が書いた兵法書です。
その中から、今回は孫子にある「兵を形するの極は無形に至る」という言葉を見てみることにしましょう。
兵を形するの極は無形に至る。
無形なれば、即ち深間に窺うこと能わず、智者も謀ること能わず。
形に因りて勝を錯くも、衆は知ること能わず。
人皆な我が勝の形を知るも、吾が勝を制する所以の形を知ることなし。
故に其の戦い勝つや復さずして、形に無窮に応ず。
が「兵を形すの極は無形に至る」のくだりですが、現代語訳にすると、
軍の態勢の極致は無形になることである。無形であれば、敵側のスパイが深く入り込んできても嗅ぎつけられず、智謀にたけた者もうかがい知ることができない。敵の態勢に応じて勝利することは、普通の人には分からない。味方が勝利したことは知っていても、味方がどのようにして勝利を決めたかを知らない。だから、その戦いの勝利のかたちは二度とは繰り返しがなく、敵の態勢しだいで無限に変化するものなのだ。
という意味になります。
「兵を形するの極は無形に至る」という言葉は組織論として考えると面白いと思います。
大企業では、部署毎・役職毎の役割が細分化され決められた中で大勢の人員を統制し、強みを発揮していきますが、放っておくと、次第に「縦割り」の組織により組織の柔軟性と機動性が失われていきます。そこで、京セラの稲盛和夫氏が提唱する「アメーバー経営」のような手法を併用していきながら、組織を活性化していく取り組みを続けていくことになります。
中小企業が大企業と競って勝ち残っていくためには、大企業と同じような組織で戦っていては勝ち目はありません。状況に応じて柔軟な組織の形をとる「無形」にすることで、ライバルからは自らの意図を掴まれることなく戦いをすすめ、機動力を高めて、勝機を見出すことが可能です。
会社の規模が小さければ小さいほど、会社の歴史が浅ければ浅いほど「兵を形するの極は無形に至る」という言葉を意識してみるべきかもしれません。