定礎とは
大きなビルなどの入り口や敷地の一角に「定礎(ていそ)」と書いた石などを見たことがある人は多いと思います。しかし、この意味などについて知っている人はあまり多くはありません。
では、定礎とはどういうものなのでしょうか、また、あの定礎と書いてる石にはどんな意味があるのでしょうか?今回は、この「定礎」について見てみることにしましょう。
「定礎」とは昔、家などの建築物を建てる際には最初に柱を立てた時の名残です。柱は地面にそのまま立ててしまうと中に入り込んで上にある部分が短くなったり、虫や動物が食べてしまったり腐らせたりしてしまう危険があったので、最初の柱を立てる時にはその下に石を敷いていました。この石を「礎石」と呼び、「礎石」を置くことを建物の建て始めとして「定礎」と呼ぶのです。
礎石を据えることは建物を建てる最初の工程で、記念となりますし、始まりを告げる印でもあります。建築工事を通して、事故がなく、またできた建築物が立派で優れたものとなるようになどの願いを込めて、ビルなどの建築に際しては、多くの場合、「定礎式」というものが行われています。
建物を建てる前に、神主さんがお祓いして、偉い人たちがクワなどをもって砂山を崩すような儀式を行っている場面をニュースなどで見たこともある人も多いと思いますが、まさしくあの儀式が「定礎式」です。
では、あの「定礎」と書いてある石盤みたいなものは何の意味があるのでしょうか。次に、あの定礎と書いてある石について見てみましょう。
ビルなどの大きな建築物を建てる際、今では丈夫な地盤まで杭を打ち、しっかりと固定して建物を支えます。したがって、現代のビル建築において礎石を置くことはありません。しかし、建築において安全などを祈念することは今も昔も変わらず行われています。最近では、定礎式の意味合いも変化しており、建物が完成したときやある程度工事が進んだ時点で、残りの工事も安全に行われるようにと行われるようになってきています。
定礎と書かれた石は、昔と違って構造上の意味合いはなくなってしまいましたが、現在では、通常、定礎と書いている石の部分に定礎箱という箱も一緒に入れられています。定礎箱の中には、建築の際の設計図や定礎式を行ったときの新聞、雑誌や関係した人たちの名簿などが納められていて、その建物を建てたときの世の中などの状況がわかるタイムカプセルのようなものになっています。
ただタイムカプセルとは異なり、定礎は建物と一体になっている為、その建物が壊される時まで定礎箱の中身は見ることはできません。ビルオーナーの思い出が「定礎」には込められていると言えるでしょう。