EU労働時間指令とは
EUには、労働者の健康と安全衛生を守るため、週労働時間や勤務終了から次の勤務開始までの時間、年次休暇などの最低基準を定めた指令があり、EU労働時間指令と呼ばれています。
EU労働時間指令とは、正式名を「労働時間の編成の一定の側面に関する欧州会議および閣僚理事会の指令」といい、1993年に施行され、その後一部が改正されています。
EU加盟国は、EU労働時間指令の内容を国内法として規定する義務があるため、指令の内容は、EUにおけるスタンダードとなっています。
EU労働時間指令は、労働者の健康と安全の保護を目的としているため、賃金などに関する規定は含まれていません。EU諸国は、国によってさまざまな社会的利害関係などの事情がありましたが、労働者の健康確保のためにどのような規制が必要かという観点から長い議論を経て、この指令ができあがりました。
EU労働時間指令では、最低4週間の年次有給休暇の付与を求めているほか、夜間労働者の労働時間を24時間につき8時間以内としたり、条件についてはそれぞれの国内法や労使協定で決定することができるとなっていますが、労働日につき6時間を越える休憩時間を設けることを求めています。
また、EU労働時間指令では、残業時間を含めた1週間の労働時間の上限を48時間とし、1日の休息期間は24時間あたり最低連続11時間と定めています。
例えば、午前8時半から午後5時半までが勤務時間である労働者が午後11時まで残業した場合、その11時間後である翌日午前10時までは、始業時刻の午前8時半を過ぎても就業させてはならないというものです。
勤務間インターバルとも呼ばれるこの仕組みは「前日、夜遅くまで働いた労働者が、疲労を抱えたまま、翌朝も定時から働かなくてはいけない」という状況を防ぐものであり、これにより、1日の労働時間は必然的に13時間未満になります。
なお、企業の役員や家族労働者のほか教会などで働く人たちは夜間労働の適用除外とすることができるほか、ガードマン業務、病院のほか継続的な活動が求められる場合も休息時間を担保することで適用除外とすることができます。また、労働者個人から同意を得ることで、週48時間労働などを適用しないことを認める「オプトアウト」条項もあります。
日本の労働環境でも、一部の企業ではこういった勤務間インターバルが取り入れ始められていますが、体力のない企業でも普及するのか、あるいは日本型の雇用慣行でもうまく機能するのか、また本家のEUで今後どのように労働時間規制が進んでいくのかについて、今後も注目が必要です。