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無中生有(むちゅうしょうゆう)〜 兵法三十六計
兵法三十六計とは、中国の三国時代以降に生まれた兵法書で、宋の名将 檀道済がまとめたと言われています。
そして「兵法三十六計」に書かれた故事や教訓は、単なる兵法ではなく処世術としても活用され、広く知られるようになっています。そういった意味では「兵法三十六計」を知ることで、現代の人たちにとっても人生の参考になるのではないでしょうか。
今回選んだのは、兵法三十六計の第七計
「無中生有(むちゅうしょうゆう)」
です。
「無中生有(むちゅうしょうゆう)」とは
「無中生有」とは、
「実際にはないものをあるように見せかけることで相手を錯覚させ、相手が偽装に気付いた後、油断に乗じて打ち負かす」計略のことです。
「無中生有」の話
中国の後漢末期、青州刺史 孔融が黄巾軍の残党に居城を包囲された時、将軍であった太史慈は馬にまたがり、従者を連れて城外に出て弓矢の練習を始めました。何をするのかと最初は警戒していた黄巾軍でしたが、毎日同じように弓矢の練習をするのを見ている内に全く関心を示さなくなりました。その様子を見た太史慈は、急いで食事を取って旅支度を整えると、馬にまたがるや、鞭を当てて油断している敵の囲みを突破して援軍を連れて戻り、味方の危機を救ったそうです。
「無中生有」は、偽りによって相手を欺く計略ですが、偽りに相手が気付いてからが本当の勝負となります。「オオカミ少年」の話と同様に、偽りに気づいて相手が油断したところを逆手にとって奇襲するところが単なる詐術とは異なるのですが、そういった意味では「無中生有」とは、芝居を打つことにより相手に「無い」ことを刷り込んで油断を誘う計略と言えるでしょう。