キャズム理論とはマーケティング用語のひとつとして利用されている理論のひとつで、従来のイノベーター理論における「普及率16%の論理」を否定したマーケティング理論のことを指しています。
キャズム理論の前に、まず、イノベーター理論のことを簡単に見てみましょう。
イノベーター理論とは?
市場に新製品や新サービスが広まる中で、それを受け入れる人々の価値観を市場の広まりの段階別に「イノベーター(革新者)」、「アーリーアダプター(初期採用者)」、「アーリーマジョリティ(前期追随者)」、「レイトマジョリティ(後期追随者)」、「ラガード(遅滞者)」の5つに分類した理論。
「普及率16%の論理」とは、それぞれの層の構成比は、
・イノベーター(革新者):2.5%
・アーリーアダプター(初期採用者):13.5%
・アーリーマジョリティ(前期追随者):34%
・レイトマジョリティ(後期追随者):34%
・ラガード(遅滞者):16%
とされており、構成比が16%である「イノベーター(革新者)」、「アーリーアダプター(初期採用者)」まで商品・サービスが浸透すると急速に普及するという理論である。
イノベーター理論は商品購入への態度により、社会を構成するメンバーを5つのグループへと分類したものなのですが、その中にある「普及率16%の論理」は商品普及のポイント・ラインとして提唱されている理論を指しています。
そんな「普及率16%の論理」を否定しているという事はどういうことなのかというと、そもそもイノベーター理論の中では「アーリーアダプター」と呼ばれる世間一般の考えに近い上に全体に占める割合もそこそこ大きい存在である彼らは商品をヒットさせるための起爆剤となっているので非常に重要であると考えられています。だからこそ、イノベーター理論の中では「アーリーアダプター」に新商品をアプローチする事こそが商品を売るためには重要だとしています。
一方で、キャズム理論の場合は「アーリーアダプター」だけに商品をアピールしたとしてもその次の段階である「アーリーマジョリティ」までは到達しないという理論です。
キャズム理論とは「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」の間にある深い溝の事を指していて、この溝を越えない限り全体的にヒットする商品を生み出す事はできないと言っているのです。
溝を越えられなかった商品はどんなに「アーリーアダプター」を利用して起爆したとしても、「アーリーマジョリティ」に到達するまでに溝の中に落ちてしまうので気づいた時には消滅してしまっていると言うわけです。ちなみにキャズムとは初期市場からメインストリーム市場への移行を阻害する深い溝を意味していて、キャズム理論は市場を把握する上で重要な理論として考えられているのです。
では何故「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」の間に溝が生じるのかについてですが、まずイノベーターや「アーリーアダプター」に属している人たちは新しいものに対して魅力を感じる傾向があるので新商品などには着目しやすいとされています。ですが、それに対して「アーリーマジョリティー」以降の人たちはどんなに新商品でもまずは周りの人が使っているという安心感がなければ手を出さないという傾向があるのです。
つまり「新しいもの」を求めているのか「安心感」を求めているのかという、消費者の意識の違いが、結果的にイノベーターや「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」との間の溝を生み出しているとされているわけです。
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