クズネックの波とは?

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クズネックの波とは?

クズネックの波とは

経済学の本を読むと必ず登場する「クズネックの波」。この「クズネックの波」とは何なのでしょうか?

「クズネックの波」の提唱者は、サイモン・クズネッツというロシア生まれロシア育ちのアメリカ人という異色の経歴の経済学者です。クズネッツは1901年の4月30日、ロシア帝国のピンスクという町に生まれました。その後、ソビエト連邦が誕生、才能を買われたクズネッツは統計局長に任命されます。

しかし、共産主義の計画経済に疑問を感じたクズネッツは21歳の時にアメリカへ移住し、米国籍を取得してコロンビア大学に入学しました。そこで、師匠のW.C.ミッチェルに学び、才能を開花させます。その際、行った調査が米国民の所得データを計算し、収集と分類を行うものでした。

この調査によって、クズネッツの研究チームは当時流行していた軽量経済学とケインズ理論をデータで示すことに成功します。しかし、彼は別の研究も行っていました。それは「ビジネスのサイクルはランダムに見えて規則性があるはずだ」という仮説に基づいた過去のデータの分析でした。大規模なデータの解析を行ったクズネッツは1926年に「小売業と卸売業の周期的な変動」という論文を発表。あっという間に博士号を手にします。

そして、この論文で取り上げられた「原因不明の、20年周期で発生する景気変動」がのちに「クズネックの波」と呼ばれるようになるのです。

「クズネックの波」については、その後も研究は進められ、住宅や商業施設の建て替えラッシュによる建築需要であるという説がリッグルマンによって提唱されたり、子供が親になる期間に近いことからミニ・ベビーブームであるという説が提唱されたりしています。

ただし、この「クズネッツの波」が存在するかについては否定的な意見も数多くあります。住宅は30年で建て替えられることはほとんどないこと、商業施設もクズネッツの生きた時代にはさほど多くなかったこと、その時代は景気循環よりも成長循環が大きかったため計測方法が存在しないこと、移動平均の繰り返しにより発見したものであるため移動平均操作を時間に対するフィルターと考えて調べると、何もしなくても20年程度の周期が生まれてしまうこと、などが挙げられます。

ちなみに、クズネックは「クズネッツの逆U字曲線」の理論や「平均貯蓄性向の長期的安定性」の理論も構築しています。経済とデータを愛し、それらに愛されたこの経済学者はその偉大な功績を称えられて1971年にノーベル経済学賞を受賞し、1985年7月8日に亡くなったのです。