コンパクトシティ政策とは、郊外への居住を抑制しつつ、生活機能を利便性の高い都市部に集約させることを指します。
東京のような都心であれば、こうした流れは黙っていても進むものですが、地方都市ではそうもいきません。郊外に住まいを構え、買い物を大型ショッピングモールで済ませるようになっているのが実状で、そうなると、街の中心部はかえって空洞化してしまいます。
同時に、郊外に住んでいれば自然災害の被害を受けやすくなり、高齢化が進んでいくと、医療面での懸念もあります。また、幅広い土地のインフラを整備するには、莫大なコストが必要となります。そこで街の中心部へと人口を移動させることで、空洞化の解消と利便性の向上を図ろうとする動きが出てきました。コンパクトシティ政策とは、少子高齢化の流れを見据えた計画に他ならないのです。
各地の地方自治体では「持続可能性」ということに、大きな関心が寄せられています。人口が減り続けている地方では、コストを引き下げるとともに、税収を安定させられるかどうかが勝負を決めます。散漫に住民が点在している現状では、今後、行政が成り立たなくなる危険があるのです。
これから高齢化社会はより進行していきますから、すぐに病院へ駆けつけられるよう、物理的な距離を縮めることも大切です。また、都市部に人口が集中すれば、公共交通へのニーズも高まり、バスなども整備されるようになります。高齢者の自動車事故が増加傾向にある昨今、車を運転しなくても生活できる都市計画は人命を守る上で有用です。
では、実際のコンパクトシティ政策は、どれだけ進行しているのでしょうか。国土交通省の形成支援のもと、積極的に実行に移す自治体も少なくありません。例えば、冬の除雪費用に莫大なコストがかかっていた青森市では、行政が力を入れてコンパクトシティ計画を進めてきました。しかしそこには、いくつかの困難も立ちはだかっています。
代表的なものとしては、不動産価格や賃料の問題が挙げられます。郊外の土地や家というものは決して高く売れるものではありません。一方、街の中心部は不動産の値段も家賃も高額になります。このため、郊外の不動産を処分して街の中心部に移り住もうにも、経済的状況がそれを許さないケースがあります。
また、コンパクトシティへの移行には長い年月がかかります。その間に首長が交代することにより、政策の転換が図られ、中断することもしばしばです。コンパクトシティ政策とは未来に向けた施策であり、息の長い取り組みが必要になります。それだけに、住民の総意をもって進めていくことが求められるのです。