ノーマライゼーションとは、障害者や高齢者が他の人々と等しく生きることのできる社会・福祉環境の整備やその実現を目指す考え方を言います。
弱者を社会的に保護する仕組みが福祉ですが、歴史的に見て障害者施策は施設の建設から始まることが多く、障害者にとって保護が障害者のニーズに合致していなかったり、人としての尊厳が保たれていないような状況が往々にして起こっていました。また、福祉を目的として、対象者の隔離が図られることも少なくありませんでした。
ノーマライゼーションは、このような考え方や現実を踏まえ、北欧の障害者福祉の手法の中から生まれてきたものですが、今日では我が国を含めた多くの国々において、障害者福祉の共通理念となっています。これは決して、障害者の持つ障害レベルを軽減し正常な状態に近づけることを意味するものではありません。
また、施設の中の生活環境などの条件を一般社会と同じようなものに変えていくという発想ではありません。あるがままの状態の障害者が、地域で障害のない人たちと同様の生活を送ることができるように、さまざまな面から条件や環境の整備を行っていくというのが、ノーマライゼーションの根幹にあるのです。
ノーマライゼーションと似た概念に、機会均等化、建物や交通手段などにあるさまざまな障壁(バリア)を取り除こうとするバリアフリー、障害を持っていても誰もが利用・参加できる普遍的な環境づくりを目指すユニバーサルデザインといったものがあります。
障害を持つ人々に対し、これだけの概念が数多く存在しているのですから、ノーマライゼーションに限らず、障害を持つ人々を支援し、彼らの社会生活を有意義なものにしようとする考え方に賛同する人は非常に多いと考えられます。
ノーマライゼーションは、デンマークのバンク・ミケルセンがノーマライゼーションの父・生みの親と呼ばれるのに対し、スウェーデンのニィリエは育ての親と言われています。それは、ニィリエがその原理を整理・成文化して紹介し、世界中に広めたためです。
また、アメリカでは、ノーマライゼーションを独自の手法を用いて理論化・体系化し発展させた人物に、ヴォルフ・ヴェルフェンスベルガーがいます。彼の功績は、障害者などの社会的マイノリティが一般市民から下にみられるのではなく、一般市民と対等の立場とすることがノーマライゼーションの目指すべきところと位置付け、ネブラスカ州などで実際の施策を講じたことにあります。
多くの人が関心を持ち、その考え方を自国で独自に展開している現在、日本でもその普及・啓発が十分に行われ、障害を持つ人の壁を少しでも取り払うよう、私たちは努力すべきです。