ファブレス経営とは、簡単に言うと、自社で工場を持たない経営のことを指します。
工場を持つというのは大きな利益を手にすることができる一方で、リスクも大きいものです。工場を作るには巨額の資金が必要であり、しかもそれをペイすることができるかどうかというのはわかりません。
流行の移り変わりの激しい現代社会では、大きな需要を見込んで工場を建てたは良いもののあっという間に流行は移り変わって製品が売れなくなってしまうということも少なくありません。
流れに乗ることができれば、利益を他に取られてしまうことがありませんから、最小限のコストで最大限の利益を手にすることができますが、時流から外れてしまうと工場というのは負債になってしまい、ハイリスクハイリターンの経営となってしまいます。
それに対して、ファブレス経営であれば、自前の工場を持つわけではありませんから商品が売れなくなってしまったとしても、工場が負債になってしまうということはありません。
工場の設備だけでなく、そこで雇っている従業員などにラインも稼働しないのに給料を支払い続けるということはなくなりますから、ファブレス経営によってリスクの低減をすることができます。
方針転換をしやすいというのもファブレス経営の利点であり、生産したいものが出た時に工場に生産を依頼をすればよく、また新しい製品を生産する時にもそれに対応をしてくれる工場を見つければ良いので、新製品を考案するために新しい設備を導入したり、新工場を建てると行った必要がなくなり、環境や時代の変化にスピーディーに対応をすることができます。
ファブレス経営の欠点としては、自前の工場ではありませんから、生産をしてくれる工場に対して報酬を支払わなければならず、利益率が下がってしまう点があります。
大ヒット商品を生み出すことができたときほどこのような負担は大きなものとなってしまい、利益を削ってしまうことになるので、工場に支払う報酬を保険として考えることができるかどうかによってファブレス経営の利点が大きいかどうかということが変わってきます。
しかし、小さな会社などでは自前の工場を持つことは簡単なものではありませんから、必然的にファブレス経営となることも多く、決して珍しい経営手法というわけではありません。
むしろ、適材適所で商品の企画や設計は自前で行い、生産は専門の工場に委託するというのは、変化の早い現代社会において、中小企業には非常に合理的な経営手法だといえるでしょう。