メンタルヘルスにおける管理職の役割
昨今、企業の担う従業員に対するメンタルヘルスを始めとする労働安全の配慮義務は非常に重要になってきており、安全配慮をなおざりにしたために、従業員が自殺して社会問題化した事件も出てきています。
メンタルヘルスにおける管理職の役割を考える前に、企業における「管理職」という立場をおさらいしてみることにしましょう。
管理職と聞くと、社員の指揮を執って自部署の業務を遂行し、会社に貢献する立場のイメージがあります。それは確かに当たってる解答ですが、その答えが全てではありません。
企業は利益を追求しますが、その一方で、従業員の就業における安全性を守らなくてはなりません。これこそが「安全配慮義務」と言われるものです。そして、管理職は、企業の経営サイドの一員に当たりますので、この安全配慮に十分に気をつけなければなりません。
昨今のサラリーマンの受ける仕事上での健康被害等について考えてみましょう。
以前の社会では、仕事上での健康被害といえば、例えば自動車事故等の就業中のケガ等でしたが、最近はむしろメンタルヘルスに関する問題がクローズアップされるようになってきています。というのも、冒頭で挙げた従業員が自殺した事件でもあったように、過酷な就業状況や、それに伴う精神的な苦痛が表面化してきているからです。
前置きが長くなりましたが、ここから本題のメンタルヘルスにおける「管理職の役割」について触れていきましょう。
先に挙げた様に、管理職は経営サイドの人間に当たります。そして、会社は従業員に対して安全配慮義務を負うので、この点で管理職の役割に「従業員のメンタルヘルスを含めた安全配慮」が入ってきます。しかも、これは従業員の直接の上司にあたる中間管理職だけが負うのではなく、上級管理職も負うことになります。
ですから、管理職は従業員の健康状態をリアルタイムで監視して、もしも何かメンタルヘルス上の疲労を発見した場合には、何らかの養護をする必要があります。その養護は、例えば仕事の内容を見直して、軽い内容の仕事に変えるとか、残業や休日出勤等の超過勤務をさせない、あるいは必要と判断される場合は産業医に相談したり、専門医の受診をさせたりすることになります。
一昔前は「体調管理も仕事の内だ」と、調子を崩した従業員を叱りつける管理職も多くいましたが、現在では、従業員の安全な就労のためとはいえ、闇雲に注意をせず、従業員の人格を重んじた言葉遣いといった心遣いも従業員のメンタルヘルス保全の上では重要となります。