一炊の夢(いっすいのゆめ)
古来より、人は自らの教訓を言葉で残し、古人の知恵や経験を「故事成語・ことわざ」として現代に伝えてきました。
その中から、時を超えて、人生に様々な示唆を与えてくれる「故事成語・ことわざ」を独断と偏見で選んでみました。きっとビジネスだけでなく、人生においても参考になるでしょう。
今回選んだのは、
一炊の夢(いっすいのゆめ)
という中国の古書「枕中記」が出典の故事成語です。
「一炊の夢(いっすいのゆめ)」とは
「一炊の夢(いっすいのゆめ)」とは、
唐代の盧生という青年の夢にまつわる故事から生まれた言葉で「人の栄枯盛衰は儚いものである」という意味です。
ちなみに出典となった「枕中記」の一節を見てみましょう。
これをもう少し詳しく現代文に訳してみましょう。
盧生は、呂翁に貧しい境遇を嘆き、出世の望みのないことを話しましたが、そのうち眠くなった盧生に、呂翁は栄華が意のままになるという不思議な枕を貸しました。
眠りに入った盧生は夢を見ます。夢の中の盧生は、名家の娘と結婚し、その後、とんとん拍子に出世して高官になりました。その後、謀反を疑われるなど紆余曲折を経た後、復権して宰相となり、晩年は大勢の子や孫に囲まれて幸せに過ごしました。そして、天寿が尽きて波乱万丈の人生が終わる頃、あくびをし、目が覚めました。
周囲を見れば旅館の店先に寝ていて、横に呂翁がいることに気がつきました。旅館の主人は盧生が寝る前にきびを炊いていましたが、まだ炊き上がっていませんでした。目に映るもの全てが夢を見る前と同じでした。
盧生は飛び起き「今のは夢だったのですか?」と聞くと、呂翁は笑いながら「人の世はこのようなものです」と言いました。
それを聞いた盧生は「名誉と恥辱の経験も、栄えたり滅んだりする道理も、生きていたり死んだりする時の気持ちも、みなよくわかりました。これもすべて先生が私の欲を抑えようとお考えになってのことでしょう。これからも決してこのことは忘れません」と礼を言い、立ち去りました。
といった感じになります。
「一炊の夢」と言えば、人生には必ず波があります。
調子が良い時は、その状態が永遠に続くと勘違いしがちですが、いつまでも良いことばかりは続きません。反対に、現在は最悪の状態であったとしても、悪いことばかりが続くわけでもありません。
良い時期は謙虚に、悪い時期は希望を失わず生きていくことが、次の転機での没落・飛躍を左右するということを忘れないようにしましょう。