源氏名とは?

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源氏名とは?

源氏名とは

源氏名とは、本来の名前とは別の名前を付ける事を言います。現代では風俗産業や性的な産業、水商売などに従事する女性が使用する名前という趣旨の用法が一般的ですが、元来の意味はこれとは異なります。

源氏名とは、源氏物語に登場する女性たちに因んだ名前をあえて使用することで、雅な空気を身にまとったり、あるいは源氏の隆盛にあやかって立身出世を願った、女官や高級な遊女たちによる仮名の使用に起源があります。

これは、忌み言葉として、特定の音を持つ事で縁起の悪い言葉と重なってしまうものを、反対に縁起の良い音を持つ言葉に置き換える文化を持つ、日本ならではの感覚によるものであると言えます。

この様な流れから、時代を経過すると武家や大奥の女中たちの間でも、この源氏名を使用する文化は広く一般化しました。

歴史上の記録にあるもっとも古い源氏名は、1505年に亡くなった女性で、三条西実に仕えていた女中であったと言われています。

本来の源氏名とは、源氏物語の54巻のタイトルのうちのいずれかに含まれる名前を使用するという決まりがありました。これが徐々に拡大解釈される様になり、その後、タイトルにはなっていない源氏物語に登場する女性の名前も含む、という習慣に変化して行きました。そこからさらに変化して行き、最終的には、源氏物語を想起させる優雅で日本的な名前であれば全て源氏名であるとする、という風に一般化して行きました。

この様な伝統的な文化を踏まえ、本来の名前とは別の名を名乗るのが一般的である、風俗産業などに携わっている女性が用いる名前のことも、源氏名と呼ぶ様になりました。

これは遊女として同様の仕事をしていた女性たちの時代から受け継がれた伝統であり、その様な場において女性は生身の存在感を消し、刹那的な夢を与える存在である事を求められていました。その為、まずは幻想の世界の存在として、本名とは別の名を名乗る事が求められたと言われています。

現代ではこれに加え、源氏名を使用することで、私生活や本職などが周囲に知れてしまうというリスクを回避し、風俗産業に従事する際に身の安全を確保することができる、という大きなメリットがあります。

歴史上の原点にある雅さ、粋さを追求するという考え方に端を発し、時代が下った現代では、女性の身を守り、より便利に生きる為の欠かせない道具という機能が付加されたと言えます。この様に、源氏名とは、大きく分けて二つの意味を持つ言葉となっています。