「人間看板」とは、一般的な用語ではなく、人通りの多い場所で「人」が「看板」を持っている状態を指す造語です。
以前から、ターミナル駅周辺などの繁華街に、「クレジットカードのショッピングカード枠の現金化」などのプラカードを日雇い労働者やアルバイトに持たせた “広告” がありましたが、最近は繁華街でなくとも、多少人通りの多い場所を中心に不動産会社(住宅販売の仲介不動産会社)の社員が「人間看板」になるケースをよく見かけるようになってきました。
首から「最寄駅より徒歩●分 ●●●●万円」といった物件情報のボードを首から下げて、「いい物件ありまーす!」と駅前で大声を出しながらチラシを配ったり、人通りの多い商店街を歩いたりしています。
不動産会社と言えば、電柱に物件情報を立てかけたり、貼り付けたり【捨て看板(通称:ステカン)】、通りに三角コースに物件情報を貼り付けたものを置いたりする “広告” 手法は昔からよく見かけたのですが、看板の設置には野外広告物法や都道府県の条例により許可が必要で、許可を得ずにステカンを設置することは違法になるということで、コンプライアンスを問われる昨今では、従来のステカンは減っているようです。
しかし、人間が歩道上で物を持つことについては、通行の妨げにならない限り、規制する法律は存在しないという “盲点” を突いて、人が看板を持って立つ「人間看板」が増えているというわけなのでしょう。ちなみに「人間看板」は行っている社員の人としての尊厳的にどうなのか?と思ったりしますが、本人が仕事として受け入れているのであれば、労働基準法として見ても、違反しているというわけではありません。
この「人間看板」、決して法的にブラックという訳ではないのですが、何となくしっくりきません。
私自身、地元の駅前などで「人間看板」を見かけると、その会社について「よく頑張っているな」といったポジティブな感情は少なくとも湧きません。むしろ「この会社はブラックなのかな?」とか「売上至上主義の会社なのかな?」といった嫌悪感が混ざったネガティブな感情と言って良いかと思います。
広告費の捻出に限界のある地元の小さな不動産会社が「人間看板」を行うのは、心情的に分かる気もする(といっても「人間看板」を肯定している訳ではありません)のですが、実際に目にする「人間看板」は、テレビCMをしたりするような大手の不動産会社が多いというのも、しっくりこない理由かもしれません。ちなみに、活動しているエリアの関係もあるかと思いますが、私がよく見かける「人間看板」は東証一部上場でテレビCMも良く見かける不動産販売会社 でした。
「人間看板」について、感想を何人かに聞いてみましたが、やはりポジティブに捉えている人はなく、大なり小なりネガティブな感想ばかりでした。にもかかわらず、東証一部上場するような大手の不動産会社が「人間看板」で集客しているということは、きっと一定の売上効果はあるのでしょう。
確かに「人間看板」による集客は、たまたま近くで不動産を探していた人を取り込む効果はあると思います。実際に「人間看板」がきっかけで不動産物件を購入した人も複数知っています。しかし、こういった “合法” だが、好感度の低い集客手法を採る会社は、「うちの会社は(普通の手法で)集客できていません!」もしくは「無理な事業拡大を行っています!」と公言しているようなものです。
「人間看板」のように好感度が低い集客手法によって短期的な売上に貢献したとしても、一般消費者の感情に無頓着な会社には長期的な繁栄はない ように思います。「人間看板」は、売れて法律に違反しなければ、何をしてもよいわけではない、という一例だと思います。