企業経営にとって 離職率の高さは非常に頭の痛い問題 です。
研修と教育に時間とコストをかけたにもかかわらず、大半の社員が数年で離職してしまう会社も多く、企業経営(特に中小企業経営)にとって離職に伴うコストが大きくなる一方です。
また、離職率の高い職場は雰囲気も悪くなり、スキルを持ったベテランが些細な事で離職してしまう、ノウハウの継承が難しくなるといった危険もあります。
こういった社員の離職・退職についての悩みはどの企業も少なからず持っているものです。では、どうやったら離職率を下げる事が出来るのでしょうか。
今回は、実際に離職率を下げる事に成功した例から学んでみましょう。
ある中小企業では、もともと3年で半数が離職してしまうような離職率の高い会社でしたが、社内の部署を越えて横の繋がりを作る活動を推進するのと合わせて、退職後に復帰しやすいよう離職後6年間はすぐに復帰できる制度を作り上げた結果、離職率は一桁まで下げる事に成功しました。
とはいえ、同じ制度を真似すれば上手くいくというものでもありません。
まず、この企業が行ったことは、社員から話を聞くというごく基本的な事です。労働者の満足度を上げればいいという論点になってしまうと、単に給与を上げるとか休日を増やすとかいった「ばら撒き」にしかならない、社員の気持ちとズレた対策になってしまいがちだからです。
社員が退職を考える時には感情の問題があります。給与面で不満があると口に出す人も、内面では同じ給与でももっと貢献度を評価してもらいたいという気持ちを持っている事もあります。そういった事はトップダウンで待遇を改善すれば解決するという問題ではなく、人によって様々な仕事に対する考え方があるという多様性を認めるところから議論を始める必要があります。
給与が低くても、休日が少なくても訴えたい事がある、そういう価値観もあることを理解する必要があります。
その為にも、まず社員から話を聞く事が大事である と言えます。社員は決して甘やかしてくれと言っているのではなく、わかって欲しいのかもしれません。
また、育休制度などの新しい制度を始める時にはその作成段階から社員の多くが関わっていることが必要です。その上で成功事例が少しずつ出始めれば実用的になってくるでしょう。
昔は年功序列、終身雇用が当たり前の労働環境でした。
それはそれでメリットもあったでしょうが、入社もキャリアパスも住宅ローンの組み方も全員一緒では、クリエイティブな思考を持つ社員が生まれる事はありません。離職率が低いのは、仕事に対しても必ずしも積極的なのではなく、むしろレールから外れない事が得策だからです。
しかし、現代では雇用の流動化が進み、社員も会社に対する帰属意識は薄まっています。社員の離職を止める為には、給与などの待遇面とは別に本当の欲求、自己承認欲求を満たしてあげる事でポジティブな感情を喚起する事も必要 な時代になってきたのではないでしょうか。