国連特別報告者とは
国連には補助機関と呼ばれる下部組織の一つに国連人権理事会という組織があります。国連人権理事会は国際社会の中で、重大な人権侵害と思われる事が起きた時に、それを審査して、対象となる国に勧告を行い改善を促すということを目的としています。
国連特別報告者とは、その国連人権理事会に任命された外部の専門家で、人権侵害について調査や監視を行い、人権理事会と国連総会に提出する報告書を作成します。調査をするにあたっては、問題が起きている双方から証拠集めをして、その国の政府に「緊急行動手続き」を持って仲裁を促します。
国連特別報告者は任命されると最高で6年まで務めることが出来、その仕事は報酬を得ることはない完全なボランティアです。
国連と国連特別報告者の関係は、国連に直接雇用をされているわけではありませんが、国連人権理事会が補助機関であることを考えると、間接的に関係があるとも言えます。
ただ、国連特別報告者については、本当に深刻な人権侵害が起きている国に対して調査ができなかったり、不十分な調査で偏りがあるという批判もあり、その役割が形骸化しているという見方もあります。
また、一見すると、国連特別報告者が出す報告書が国連の総意であるようにも見えますが、国連の総意ではない個人的な見解で終わることも多く、国連自身との意見の乖離も問題視する声もあります。
なお、国連特別報告者の報告書の内容は、何ら法的拘束力を持つものではないので、その内容について報告書で勧告された政府は必ずしも受け入れる必要はありませんし、誤った部分があればそれについて反論することも出来ます。
実際、過去に日本に対して、根拠のない数字データを元に援助交際について国連特別報告者から勧告されたことがありますが、政府が反論の書簡を送ったところ、それを認めて該当する部分は「誤解を招くものだった」と認めました。
ただ、国連特別報告者からの勧告に従う必要はないとはいえ、全世界に報告書の内容が公表されるため、それについて何も反論しなければ書かれている内容は正しいと認知されることもありますので、政府としてはその点を十分に考えて対応する必要があります。