「辞世の句」とは、人が死の間際に詠む漢詩・和歌・俳句などのことです。自分の人生を振り返り、この世に最後に残す言葉として、様々な教訓を私たちに与えてくれるといって良いでしょう。
古来より数えきれない辞世の句が残されてきましたが、今回は、太田道灌の最後の言葉として、太田道灌の辞世の句を紹介してみることにします。
太田道灌の最後
太田道灌は、江戸城を築城したことで知られる室町時代後期の武将(扇谷上杉家の家宰)です。戦巧者としても知られ、1476〜1480年に起きた長尾景春の乱をほぼ独力で戦い抜くなど、主家 扇谷上杉家の勢力拡大に尽力しました。しかしながら、扇谷上杉家内で太田道灌の力が強くなることを恐れた勢力によって、1486年8月25日暗殺されてしまいます。享年は54歳前後であったと言われています。
そんな太田道灌の辞世の句と言われているのが以下の句(短歌)です。
太田道灌 辞世の句
「かかる時 さこそ命の 惜しからめ かねて亡き身と 思い知らずば」
この歌を現代文に訳すなら、
常にこの身は死んだものと思っているから、このような時でも命を惜しいとは思わない
といったところでしょうか。
太田道灌の死後、主家 扇谷上杉家は山内上杉家との抗争に明け暮れ、新興勢力である北条氏によって滅ぼされることになります。
死を前にした時、彼の頭の中を去来したのはなんだったのでしょう。この太田道灌の最後の言葉である辞世の句は、皆さんの心にどう響きましたか?