忘れられる権利とは
「忘れられる権利」とは、検索エンジンを使用した際に出る検索結果に個人情報が含まれる場合、それの削除を検索エンジン側に求めることができる権利です。
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つまり、インターネットの検索エンジンに対する請求権だということができるでしょう。では、具体的にこの権利はどういうものだといえるのでしょうか。
たとえば、過去に犯罪を犯した人がいるとします。そして、その人が逮捕されたという記事がウェブに乗り続けているとしましょう。その記事が検索エンジンで検索することで検索結果として出てくるとしたら、その人の就職や結婚などに大きな影響を与えるであろうことは容易に想像できます。
そこで、こういった場合に忘れられる権利を行使して、検索エンジン側に当該の検索結果を削除してもらうよう求めることができるのです。
ただし、忘れられる権利とは単なる請求権です。ですから、求める権利があるからといって、必ず削除が認められるわけではありません。このような犯罪歴に関わる場合でも、ある程度の時間が経過すれば、被告人のプライバシーを考慮して検索結果から削除するのもやむないというスタンスを日本の司法はとっています。
ですが、このような犯罪歴の場合は、公益性という問題が深く関わってきます。例えばその犯罪がテロ未遂であるとすればどうでしょうか。たとえ服役して刑務所から出てきたとしても、その人物がまたテロを行いかねないということは容易に想像ができます。これは国益にも関わってくる問題ですから、たとえ事件から時間が経過したとしても、このような犯罪の場合は削除が認められないといってよいでしょう。
このように見てみると、忘れられる権利は、インターネットが肥大しまたこれからも大きくなっていくであろう現代では必需の権利であるようにも思えます。紙媒体と違ってデータとして残り続けるインターネットの記事は、半永久的にあらゆるものを保存し続けるからです。
とはいうものの、もしもこの権利を強く推し進めるとしたら、それは表現の自由を侵害することにもなりかねません。
検索エンジン最大手のGoogleは、特にそういった問題に対して危機感をもっています。つまり、この権利を行使することで検索結果を容易に削除することができるようになると、使い手は自由に発言をすることができなくなります。場合によっては自分の発言のせいで訴えられてしまうこともあるからです。
検索エンジンはそういった個人の発信も取り込んでビジネスを展開しているわけですから、これを禁止されると死活問題です。
そのためGoogleをはじめ、様々な検索エンジンが忘れられる権利に対して慎重な姿勢を取っているといえるでしょう。また、それは司法においても同じです。表現の自由は非常に微妙な権利であり、少ない議論では大きな指針を決めることができないからです。
そのため現在では、これから一層活発になるであろう議論を蓄積するという段階にあります。よって、この権利がより精確に行使されるには、まだ時間が必要だといえるでしょう。
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