今回はネット“炎上”の対応について、インターネットセキュリティ会社エフセキュア社の事例を見ながら考えてみようと思います。
まず“炎上”に至った経緯を簡単に書いてみましょう。
今回炎上事案が発生したのはフィンランドにあるインターネットセキュリティ会社 F-Secure社 の日本法人であるエフセキュア株式会社(以下、エフセキュア社)です。
- 反ファシズム、反レイシズムを標榜する自論とは異なる主義主張に賛同した(具体的には画像記事にFacebook上でいいね!を押しただけ)ユーザーの個人情報を収集
- 反ファシズム、反レイシズムを標榜する匿名のTwitterアカウント上にて氏名・住所等の個人情報を公開
- 反ファシズム、反レイシズム主義者の犯罪教唆とも取れる発言を誘発
したことが発端となり、さらにエフセキュア社に勤務していたK氏が当該のTwitterアカウントを運営していることがネット上で暴かれるに至り、インターネットセキュリティ会社の社員が自身と主義主張が異なるFacebook上の個人情報を抜き出し公開するへの批判が2ちゃんねるやSNS上で一気に拡散し“炎上”に至った訳です。
この時点では、“炎上”はインターネットセキュリティ会社に勤務する一社員が行った行為ということにとどまっていて、“使用者責任”が問われるエフセキュア社の動向に注目されたのですが・・・。
事案発覚当初、エフセキュア社は本社サイドも含めて迅速に社内調査を行い対処することを発表していました。
しかし、以下のニュースを発表した後、エフセキュア社も“炎上”してしまいます。
11/4に公開したニュースについて、社内の調査結果の続報を以下の通りご案内致します。
エフセキュアの社内のお客様情報や業務上知りえた個人情報が外部に漏えいしたという事実はありません。
エフセキュアはフェイスブックやその他SNSに登録されている個人情報を保持しておりません。
エフセキュア製品が、エフセキュア製品をご利用のお客様の個人情報を収集することは、いかなる利用形態においてもございません。
エフセキュアでは、今回公開されたとされるリストは所持しておらず、内容も確認致しておりません。
なお、不適切なSNS利用があったとされている社員は、本人の意思により既に弊社を退職しております。
- K氏がインターネットセキュリティ会社の社員という地位を自らの政治信条に利用したのか?
- K氏がエフセキュア社で知りえたセンシティブ情報を使って個人情報の抜き出しをしたのか?
といった一般的なネットユーザーの疑問に答えず、エフセキュア社自体に落ち度がないこと、エフセキュア社のクライアントに影響がないこと、当該社員は依願退職をしたこと を発表するというミスを犯したわけです。
本来、ネット炎上を引き起こした場合、自社の顧客にお詫びをすることは当然として、
- 自社に非があることを認め、
- 何が起こっていたかを究明し、
- 当該社員に対して罰を下し、
- 再発防止をどのようにするかを考え、
ネット上に公表することが重要だと思います。
しかし、今回はエフセキュア社がとった方法は
- 自社に非があることを認めず、
- 何が起こっていたかを究明せず、
- K氏の依願退職を認めることで幕引きをし、
- 再発防止については触れない
では、さらなる“炎上”につながってもやむを得ないと言えるでしょう。
ましてや今回、当該の会社は有名なインターネットセキュリティ会社で、個人情報や重要情報を守る立場の会社です。安易なニュースリリースを行ったために失ったネットユーザーの信頼は、エフセキュア社の今後の経営にとって大きな足かせになるのではないでしょうか?