中国人観光客による高級品の購入「爆買い」が下降線をたどっているようです。
かといって、都内を見ていると依然として中国人観光客が大きく減っている印象はなく、高級品の購入が減り、服飾・化粧品などの購入にシフトしているとのこと。結果、高級ブランド店や高級百貨店ではかなり売上を落としているようで、インバウンドによる「爆買い」ブームの反動をもろに被っている状況です。
中国人観光客の「爆買い」と言えば、ここ数年で中国語のアナウンスが流れ、中国語が話せる店員が何人もいて、各種表記も中国語が目立つ高級店が都内あちこちに増えました。百貨店でも中国人観光客向けに改装し、さらには、ショップの見た目だけでなく、ショップ内の商品も中国の富裕層が好む品揃えにしていたところも多かったように思います。ショップや百貨店としては、日本の人口に匹敵する中国の富裕層の訪日はまだ始まったばかりで、インバウンドの爆買いはこれからまだまだ増えると信じていたのでしょう。
しかし実際は、円高やポンド安、中国政府の政策によりわずか 2年ほどで「爆買い」ブームは過ぎ去ろうとしています。
前年割れする売上を目にして、高級ブランド店や高級百貨店では慌てて日本人のお得意様へ回帰する動きも出ていますが、時すでに遅く、日本人のお得意様の中には、自分たちが買い物をしにくくなったショップに足を運ばなくなった人も多いようです。
また、当社で見ている限りでは、訪日観光客によるインバウンドブームに乗った会社は、特にリアルな店舗運営をするところを中心に、店舗の改装や品揃えを変える費用がかさんだり、既存顧客からのクレームが増えたりで思うような収益アップにつながっていないように感じます。このまま推移すると、ヒトやハコに先行投資したものの、回収する前に「爆買い」ブームが弾けてしまう危険性が高いのではないでしょうか。
会社経営においては、マーケットの流れに乗り遅れない、売れれば良いという考え方で動きがちで、そのこと自体は間違いではありませんが、あくまでこれまで会社を支えてくれていた既存顧客と相反するトレードオフの関係であってはなりません。
国内でビジネスを行っていくのであれば、これまで商品やサービスを購入していただいていた顧客が最も重要です。もちろん、訪日観光客によるインバウンド需要は今後も徐々に増えていくかもしれませんが、お客様や経営の中心にインバウンドが来るとは思えません。
「訪日観光客はリピーターになりえない」「急激に拡大したマーケットはいつか臨界点に達する」のが、今回の「爆買いブーム」の教訓です。お得意様を大切にし、長い関係を作り上げていくことこそ、いつの世も変わらぬ商売の秘訣ということを忘れないようにしたものです。