労基署の臨検
女性新入社員の過労死に揺れる電通に労基署(労働基準監督署)の「臨検」が入ったとのニュースがありました。今回は、この「臨検」について触れてみましょう。
そもそも「臨検」とは行政機関の司法警察員が法令が遵守されているか調査をするために、問題が起こっている事業所などに出向いて立ち入り調査することを指します。
「臨検」は今回の電通に入った労基署(労働基準監督署)の職員だけでなく、麻薬取締官や税関、海上保安庁、海上自衛隊、児童相談所などに認められています。臨検は基本的に事前連絡がなく、抜き打ちで行われますが、労基署の臨検の場合、大きな事案でもなければ、事前に労基署から連絡があり、必要書類の指示と日程調整後に臨検といったケースも多いようです。
今回の電通での過労死の件では「強制調査」と報道されていました通り、事前連絡がなく、臨検が行われたようです。
労基署の臨検は、基本的に法令が遵守されていないと思われる事案(告発)を受けて行われます。法令が遵守されていないと思われる事案とは、例えば、退職者が残業代などの賃金未払いで労働基準監督署に駆け込んで告発するようなケースです。そういった事案を受け、事実関係と労働関係の法令の遵守状況を調査に来るわけです。
ちなみに臨検には協力しなければなりません。労基署監督官の臨検を拒んだり、虚偽の陳述をしたりすると、罰金が待っています。
労基署の臨検が終わったら
労基署監督官の臨検が終わり、法令違反や改善すべき点が見つかった場合、労基署監督官から是正勧告や指導を受けます。法令違反があった場合は、是正勧告書が交付されて、是正期日までに法令違反を是正するように求められます。そして、会社側は法令違反を是正し、報告書を労基署に提出します。
是正勧告は、行政処分ではなく行政指導なので、労基署からの是正内容を行わなかったこと自体で罪に問われることはありません。しかし、その結果、再監督になったり、最悪は司法処分されることもあります。法令を遵守することは、企業としてのルールです。たまに是正勧告は是正義務ではないとうそぶく経営者を見ますが、世の中からブラック企業と認定されないよう労基署の臨検には真摯に対応すべきでしょう。