過重労働撲滅特別対策班(かとく)とは
過重労働撲滅特別対策班(かとく)とは2015年4月1日、東京労働局と大阪労働局の二局に新設された組織です。
日本ではかねてより長時間労働、ひいてはブラック企業と呼ばれるような企業に対して何らかの対策をとらなくてはならないと言われ続けていましたが、この過重労働撲滅特別対策班はまさにこれらの問題への特効薬として作られた組織であると言えます。
ではこの過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」がどういった業務を行うのかと言うと、基本となるのは労働基準法を無視した違法操業状態にある企業の摘発と指導です。
“違法操業”企業の摘発と指導は、これまでも労働基準監督署が行ってきましたが、労働基準監督署の能力だけではもはや対処ができないレベルにまで、違法労働は高度化しました。特に昨今多いのが、パソコンに保管された労働時間のデータを改ざんし、表面的には違法な労働が無いと見せかけるような事例です。これを行われると摘発のためにデータ解析などの作業が必要になるため、一般的な労働基準監督署のスタッフでは業務に限界があります。
そこでデータ解析の専門機器を操作する能力がある人員を集めて作られたのがこの過重労働撲滅特別対策班(かとく)であり、高度な違法労働事件に対しての調査をメインとして担うわけです。
また、過重労働撲滅特別対策班(かとく)が担う役目としてさらに重要なのが、悪質な事案については刑事事件として書類送検をするというものです。
「刑事事件として書類送検をする」ということについて今一つ正しい認識がされていないのですが、実は労働基準法違反の処罰の対象者は事業主または事業の経営担当者、その他事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする全ての者として定められています。このうち最も注意が必要なのが「事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする全ての者」と言う部分で、これは「事業主や経営担当者ではなくとも、労働法違反に関わっている人物であれば処罰が可能である」ということを示しています。
もっとかみ砕いて言えば、部下に対して長時間労働を強いるような上司がいた場合、その上司も法的処罰の対象になるわけです。
これまではなあなあで済まされていた部分もありましたが、過重労働撲滅特別対策班が出来た以上、今後そういった事案が発生した場合はより厳しい罰則が下る可能性が高いと言えます。
日本は世界的に見ても労働生産性が悪く、経済規模こそ先進国であるものの労働環境は発展途上国のそれに近いと揶揄されることもあります。そのような状況を打破し、名実ともに先進国に相応しい国となれるよう、過重労働撲滅特別対策班(かとく)には頑張って欲しいところです。