兵の情は速やかなるを主とす
「孫子」は、二千数百年前の弱肉強食の時代に生きた孫武が書いた兵法書です。
その中から、今回は孫子にある「兵の情は速やかなるを主とす」という言葉を見てみることにしましょう。
兵の情は速やかなるを主とす。
人の及ばざるに乗じ、虞らざるの道に由り、其の戒めざる所を攻むるなり。
が「兵の情は速やかなるを主とす」のくだりですが、現代語訳にすると、
作戦は、何よりも迅速に行うことが肝要である。敵の隙に乗じて、敵が予想しない道を通り、敵が警戒していない場所を攻めることだ。
という意味になります。
この文章を読んで思い浮かんだのは、織田信長が今川義元を破った桶狭間の戦いです。万全の体制を整えて攻めてきた戦巧者の今川義元に対し、敵が予想しない道を通り、敵が警戒していない場所で奇襲を掛けた織田信長を彷彿とさせる内容となっています。
孫子では、勝つ条件が整わない場合は戦わないことを説いていますが、敵が攻め寄せ、やむを得ず戦わなければならない場合は、「兵の情は速やかなるを主とす」のように、敵の予想しないスピードで、敵が予想していない所を攻めるべきです。
そして、前章の「先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん」にあるように、敵が最も重要な所(この場合は今川義元の本陣)を攻めて、全ての条件が揃ったのが、桶狭間の戦いだったと言えるでしょう。
現在のビジネスでも、大なり小なりライバル社は存在しますが、「スピード」は中小企業であっても大企業と互角に渡り合うための重要な“武器”の一つと言って良いでしょう。