テラメント事件とは
テラメント事件とは、2008年1月25日にテラメント株式会社が大手企業6社の株式51%を取得したという虚偽の株式大量保有報告書を関東財務局に提出した事件のことです。
テラメント社から提出された報告書の記載によると、過半数の株式を取得したとされる企業は、アステラス製薬、ソニー、トヨタ自動車、フジテレビジョン、三菱重工業、日本電信電話の6社でした。この株式取得に要する資金は推定で20兆円を超えていますが、すべてテラメント株式会社の代表取締役Y氏からの借入金とされていました。ちなみに、代表取締役のY氏は資金調達の方法として、オイルマネー、またもう一つの可能性としてライブドア関連で資金を得たと某新聞で答えています。
しかし、個人でこれだけの資金を保有することは考えにくい上、これら6社にはいずれも安定株主がおり、個人が突如として過半数の株式を取得することは事実上不可能であることから、金融庁はその日のうちに調査を開始し、次の取引開始前に金融庁が記者会見を行ない「この大量保有報告書が虚偽である可能性がある」と発表しました。幸いにも報告書が提出されたのが、金曜日の取引終了後であったため、株式市場に大きな混乱を招くことはありませんでした。
このテラメント株式会社は、2007年11月2日に設立され、資本金は1千円で社員は代表取締役Y氏のみの会社でした。業務内容はIT、自動車、半導体、宇宙航空等とされていますが、そもそも企業実態が不明でした。
2008年1月30日に証券取引等監視委員会は、テラメント株式会社と代表取締役社長Y氏に対する強制調査に乗り出しましたが、同年4月4日に金融庁と証券取引等監視委員会は、代表者に刑事責任能力がないとして刑事告発は見送られました。
このテラメント事件では、金融庁の電子開示システムEDINETが提出された書類は、明らかに虚偽のものであっても、そのまま開示されるシステムであったことから、金融庁側で勝手に開示を止められないのはシステムの不備ではないか、という批判がありました。
テラメント事件のその後ですが、関東財務局が訂正報告書の提出を命ずる行政処分を行なったにも関わらず、テラメント株式会社側から提出されることもないまま、2008年の金融商品取引法改正翌年の5月29日に、金融庁が非縦覧化するまで1年4ヶ月にわたり大量保有報告書がインターネット上で閲覧可能な状態が続いていました。
そして、このテラメント事件を契機として、EDINETでの報告のための事前登録に関して、一定要件を満たす提出者に対して登記簿謄本等の提出が義務づけられるようになりました。