専門業務型裁量労働制とは?
専門業務型裁量労働制とは、一定の専門職に就いている労働者について、実際に勤務した労働時間に関係なく、あらかじめ労使協定によって定められた一定の労働時間働いたものとみなすことができる制度のことです。
専門業務型裁量労働制は、みなし労働時間制の1つになっています。みなし労働時間制には、裁量みなし時間制と事業場外みなし労働時間制の2つがあります。その中で、専門業務型裁量労働制は、裁量労働みなし時間制の1つになっています。
専門職としてみなされている労働者の行う業務は、それぞれが持っている特有の能力によってしか業務を行うことができない場合があります。そして、専門職の労働者に期待されることは、労働時間の長さではなく、職務の質や収益などの結果であるという実情を反映するために「専門業務型裁量労働制」という制度が準備されているわけです。
専門業務型裁量労働制の趣旨は、使用者や事業主の指揮系統におくよりも、その業務の専門性から、労働者に労働時間についての裁量性を容認すべきという部分にあるのですが、制度を悪用して専門業務型裁量労働制が残業代支払いを避けるための手法として利用される危険性があります。
そのため、労働基準法などによって、専門業務型裁量労働制の適用については厳格な要件が設けられています。具体的には、労働基準法38条第1項で定められている要件をみたさなければ、専門業務型裁量労働制は認められません。
専門業務型裁量労働制は、過剰労働や法外な残業時間につながりかねないものであるため、適用や運用は限定的にしておく必要があります。専門的な要素があるあらゆる業務について、専門業務型裁量労働制が適用されてしまうと、残業代の支払いを逃れるための道具として利用されかねないため、労働基準法によって、対象業務が定められています。
労働基準法によって定められている専門業務型裁量労働制の対象となる業務としては、新商品・新技術の研究、情報処理システムの分析・設計、新聞・出版の取材・編集、衣服、広告などのデザイナー、コピーライター、システムコンサルタント、ゲームソフト開発者、証券アナリスト、金融商品開発者、弁護士、税理士、中小企業診断士などとなっています。