兵は拙速を尊ぶ
「孫子」は、二千数百年前の弱肉強食の時代に生きた孫武が書いた兵法書です。その中から、今回は孫子が語源の「兵は拙速を尊ぶ」という言葉を見てみることにしましょう。
実は「兵は拙速を尊ぶ」という言葉、孫子には存在しません。孫子の中にある「兵は拙速を聞くも、未だ功の久しきをみざる」という言葉から派生したものと思われます。
ちなみに「兵は拙速を聞くも、未だ功の久しきをみざる」は、
兵は拙速を聞くも、いまだ功の久しきをみざるなり。
それ兵久しくして国利あるは、未だこれあらざるなり。
故に尽く用兵の害を知らざれば、則ち尽く用兵の利を知ること能わざるなり。
のくだりで出てきます。現代語訳にすると、
短期決戦で成功した例は聞くが、長期戦で成功した例は見かけない。長期戦に持ち込んで自国に利益があることは未だかつてない。それゆえ、用兵による損害を十分把握していなければ、用兵から得られる利益を知ることはできない。
という意味になり、「兵は拙速を尊ぶ」は「作戦を練るのに時間をかけるのではなく、素早く行動することが肝要である」ということになります。
「兵は拙速を尊ぶ」は現代のビジネスでも言えることで、新たなことを実施する時に、最初から長期戦を想定しても上手くいきません。
「時間が経つ」ということは「お金を消費する」ということでもあります。長期戦になれば、そのビジネスに対する直接的なコストだけでなく、ビジネスを維持するために必要なコスト・労力の負担の方が圧倒的に大きくなって、失敗してしまいます。
大掛かりで長期戦のものに目が向きがちですが、小さくとも短期戦のものを積み重ねていく方が成功率も高く、結果として成果につながるということは覚えておくべきでしょう。