股を割いて腹に充たす
古来より、人は自らの教訓を言葉で残し、古人の知恵や経験を「故事成語・ことわざ」として現代に伝えてきました。
その中から、時を超えて、人生に様々な示唆を与えてくれる「故事成語・ことわざ」を独断と偏見で選んでみました。きっとビジネスだけでなく、人生においても参考になるでしょう。
今回選んだのは、
「股を割いて腹に充たす」
という中国の古書「貞観政要」が出典の故事成語です。
「股を割いて腹に充たす」とは
「股を割いて腹に充たす」とは、
自分の股の肉を切り取って食べて満腹になっても自身は滅びてしまうというたとえから「一時しのぎで利益を得ることは、かえって身を滅ぼすことになる」という意味で使われます。
「股を割いて腹に充たす」とよく似た話は、現代のビジネスでもあります。
長期間に渡って成功している人は、お客様を大切にしてお客様のニーズにどう応えるかを考えながら日々精進しますが、ビジネスが上手くいかない人は、自社の商品やサービスを買っていただいているお客様への視点が欠けがちで、目先の利益に流されてしまいます。
私自身、起業支援の一環で多くの起業家とお話ししますが、「自分が何を為すために起業したのか?」「自分がお客様に商品やサービスを提供しようとする目的は何なのか?」のがいつの間にか変質して、自己の利益だけを追求してしまっている人を時々見かけます。そして、そういう人は一時的な成功を得ることはあっても、いずれは非常に厳しい経営状態に追い込まれてしまいます。
「三方良し」という近江商人が大切にした言葉があります。
三方良しとは「売り手良し、買い手良し、世間良し」という三つの「良し」のことを指しますが、経営者は「股を割いて腹に充たす」ように自分の目先の利益だけを追うのではなく、どうやったら売り手と買い手が満足して社会貢献もできるのかについて知恵を絞っていくべきだと言えるでしょう。