「辞世の句」とは、人が死の間際に詠む漢詩・和歌・俳句などのことです。自分の人生を振り返り、この世に最後に残す言葉として、様々な教訓を私たちに与えてくれるといって良いでしょう。
古来より数えきれない辞世の句が残されてきましたが、今回は、在原業平の最後の言葉として、在原業平の辞世の句を紹介してみることにします。
在原業平の最後
在原業平は、平安時代の貴族で六歌仙・三十六歌仙の一人としても知られ、「伊勢物語」の著者とも言われています。平安京への遷都を行った桓武天皇のひ孫にあたり、晩年には天皇の実質的な秘書にあたる「蔵人頭」に任じられるなど重用された在原業平ですが、880年の7月9日に亡くなりました。享年は55歳前後だったようです。
そんな在原業平の辞世の句と言われているのが以下の句(短歌)です。
在原業平 辞世の句
「ついに行く 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思はざりしを」
この歌を現代文に訳すなら、
人は必ず死ぬと知ってはいたが、昨日今日という間近で自分がそうなるとは思わなかった
といったところでしょうか。
歌の才能に恵まれ、美男の代名詞とも言われた在原業平ですが、死に際して詠んだのは意外にもあっさりとした死への感想のような歌でした。
死を前にした時、彼の頭の中を去来したのはなんだったのでしょう。この在原業平の最後の言葉である辞世の句は、皆さんの心にどう響きましたか?