グーテンベルグ仮説とは
グーテンベルグ仮説とは、「価格の変化が売上にあまり影響しない一定の価格帯がある」とする消費者の価格感度に関する仮説のことを言います。今回は、このグーテンベルグ仮説について見てみることにします。
消費者は潜在的に値頃価格を決めており、その価格を「内的参照価格」と言います。内的参照価格には許容範囲があります。許容範囲を超える高い価格だと売上を高める効果がありますが、消費者の購買意欲は下がるため、売上が下がります。逆に、許容範囲を超える安い価格だと売上を下げる効果が大きいので、消費者を増やさなければ、売上が下がります。
グーテンベルグ仮説の具体例を見てみることにしましょう。
例えば、衣料店で3000円のシャツを販売していたとします。このシャツを3500円に値上げしたときに、消費者が価格が高いと感じてしまえば、購入を控えてしまい、売上が下がります。今度は3000円のシャツを3150円に値上げしたとき、消費者は内的参照価格の許容範囲内であれば、消費者はいつも通り購入して、売上が少し上がります。
内的参照価格は消費行動の変化により変動します。
例えば、物価が安定的に上昇しているインフレ経済であれば、内的参照価格が変わらないと消費者は買えるものがなくなるため、内的参照価格は上がっていきます。内的参照価格は急に上がるわけではなく、許容範囲の高い価格帯に慣れていくと、その価格が内的参照価格になります。逆に景気が悪化すると、許容範囲が狭まり、少しでも価格が上がるだけでも、購買意欲が下がってしまうため、物価が上がりにくくなり、デフレになります。
日本は消費税を10%にすることを決めましたが、消費税を5%から8%に上げ、数年後に10%に上げるように段階的に消費税を上げることにしました。段階的に消費税を上げる理由は内的参照価格の許容範囲内で消費税を上げて、数年後には内的参照価格が上がっていき、内的参照価格の許容範囲内で再び消費税を上げれば、売上に影響を与えないで消費増税ができると考えたためです。
しかし、日本では長引くデフレ経済によって、内的参照価格が上がりにくい状態になっていたため、消費税を5%から8%に上げた価格は、内的参照価格の許容範囲を超えてしまい、購買意欲が低下して売上を下げることになりました。その結果、消費税を10%に上げるのを延期することになったわけです。
グーテンベルグ仮説から考えると日本がデフレ経済から脱却し、安定的なインフレ経済になるには内的参照価格が上がっていくことが需要なことと言えるでしょう。